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チームの移動をスクールの先生に相談したところ、先生は渋い顔をした。
「彼に抜けてほしくありません」
息子は六年生を差し置いて、今やチームの柱だった。
この先、このチームは勝てなくなるだろう。
「でも、潰されたくないんです。バスケは個人プレイでは無いけれど、このチームでプレイするあの子を見ていると、痛ましくて、見ているだけの私でさえ心苦しい」
楽しんでするが一番のチームなら、彼が抜けても楽しんですればいい。
チームの皆も、勝ちにこだわる彼とプレイすることは息苦しく感じているように思える。
温度が違い過ぎると、私は嘆いた。
けれど、先生は首を横に振った。
「チームが勝てなくなるからではなく、彼の為にならないと、私は考えています」
「?」
「この先、彼が中学生になった時、部活動でチームに恵まれなかったらどうしますか?」
学校を移ることは出来ないだろう。
「そこで腐って終わることになりかねない。私は、彼にチームを引っ張れる柱に育って貰いたい。子供はいかようにも変われます。チームを変えられる強さを培って貰いたい。それは、何もバスケに限ったことでは無いでしょう?」
いつだって人は環境を選べるわけではないのだ。
成功を手にしている者は、恵まれない環境下においても、一筋の光を見失わなかった者だろう。
では、どうか、どうか導いて欲しい。
彼が一皮むける様を、どうか私に見せて欲しい。
私は、チームメイトに伝わらないもどかしさを嘆く彼にそれを伝えた。
「諦めたら試合は終了だよ。一つも逃さないで見てるから、最後の最後まで足掻きなよ」
私は最愛の息子にいばらの道を選択させた。
これまでのように、きっと乗り越えてくれる。そう、信じたのだ。
Fin.
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