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勝負の切り札は何色に?
「ねえ、これどうかな?」
ソファーで寛いでいた金居蓮は声のする方へ振り向いた。
声の主、柴村智穂は風呂上がり。上気した肌を隠そうともせず、下着だけを身に着けた姿で立っていた。
「……どうって?」
突如、挑発的な姿が視界に飛び込み、言葉を失いそうになったが、何とか当たり障りのない返答を絞り出す。
「新しく買ったのよ。新しい彼氏が出来た時用の勝負下着」
そう言って右手を頭に当ててポーズを取る。
智穂が身に着ける下着は上下黒色のセットで、上品にレースがあしらわれており、大人の女性を演出するのに十分な魅力を備えている。
しかし、蓮が驚いたのはそこではない。
――生地が殆ど透けている。
そもそもブラ、ショーツ共に生地の範囲が狭く、日に焼けていない色白の肌がこれでもかと露出しているのに、カバーされている部分でさえ生地が透けていて肌が見えていた。
肌だけではなく、双丘の突起さえ透けて見えているのだ。
ブラだけではない。ショーツも当然のように透けており、智穂の薄い茂みが見えてしまっていた。
「まだ、彼氏も出来ていないのに、先に勝負下着を買ってしまうのは……どうなんだ?」
「なんでよー」
蓮の言葉に不満げに口を尖らせて、ソファーにゆっくりと近づく。
「いざ勝負って時に、切り札の武器は必要でしょ?」
普段はキーボードを打ち続けるしなやかな指が、蓮の頬を撫でる。
「――ちょっと照れてる」
指摘され、蓮は慌てて顔を背ける。
「そもそも戦いすら起きてないのに、そんな大層な武器は必要ない。作家は出会いが無いんだろ。だったら、絵に描いた餅だよ」
「私は必要だと思うな。だからこそ少ないチャンスは生かさないといけないんだし。転ばぬ先の杖って言うでしょ?」
ちらり、と智穂を見る。男の情欲を煽る扇情的なランジェリー。運動不足になりがちな小説家という職業でありながら、ジム通いと自宅での運動を欠かさず、均整の取れた体。すべすべで瑞々しい肌。
ここまでされて欲情しない男はいないだろう。
「『やりたい』ってのが一目瞭然なのは、すごくいいと思うのよ。言葉よりも態度で示せるし。――ま、いいや。着替えてこよっと」
智穂が振り向く。すると蓮の視線が釘付けにされた。
黒いレース付きのショーツはタンガで、ぷりっとした綺麗なお尻がほぼ丸出しになっていた。
正面から見ただけでは気付かない、刺激的なデザイン。蓮はたまらず後ろから智穂に抱きつく。
「ちょっ」
抵抗する間もなく、ソファーに押し倒される智穂。
すぐさまいつもの癖で蓮は智穂の匂いを嗅ぎ、首筋から舐め始める。
「――これは勝負下着、効果ありってことでいいのかな?」
「ああ、負けたよ――。すごく可愛いし似合っている」
「こんな状態で言われても、ロマンが無いなぁ……」
蓮の右手が乳房に伸び、ゆっくりと力が加えられる。大きな手で揉まれ、その力に合わせて膨らみは形を変えていく。
「ねえ、今度蓮もエッチな下着買ってよ」
「――俺が? 智穂のを選ぶの?」
「馬鹿、違うよ」
「えっ、じゃあどういうこと?」
蓮は困惑しながらも、智穂の体を舐めるのも、触るのもやめない。
「男性用のセクシーランジェリーってのもあるみたいで、スケスケのヤツとか、ギリギリ隠せるのかな? ってくらい小さいヤツとかあるみたい」
「――それを俺に着て欲しい、と?」
「そう。恥ずかしかったら私が買ってあげるよ」
「いやいや……。恥ずかしいのはそこじゃなくて……」
智穂が蓮に触られる気持ちよさに身を任せながら、楽しそうに笑う。
「浮き彫りにされちゃうのが恥ずかしい? いいじゃん、もう裸だって何度も見ている仲なんだし」
「明朗闊達な俺でも、恥ずかしいことはありますよ――」
蓮の大きな手がタンガの中に潜り込み、大きく滑らかな指が秘裂を撫でる。そこは既に湿り気を帯びていた。
風呂上がりの湿り気ではない、少し粘り気のある水気が――。
「んっ……。今度買っておくから、着てみてね。色は――紫とかどう?」
「もっと地味な色がいいです……」
後日、紫や金色の男性用セクシーランジェリーが蓮にプレゼントされた――。
「せめて黒色とかにしてよ……」
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