イントロダクション

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■遍く源、元素(エーテル)と魔法  この世界は、エーテルと呼ばれる一種の生命エネルギーを宿しています。これらは「遍く源」と呼ばれ、全ての生命が内包する力です。私の体にも、あなたが踏みしめている大地にも、大気にも、水にも、このエーテルは含まれています。エーテルを理解することが、世界の理を理解するための第一歩であり、冒険者として最も身近な例で言えば、魔法を操る技術にも影響します。 ■生命とエーテル  前述したように、エーテルは生命の源たる力です。人間で言えば、体内エーテルが乱れれば体は抵抗力を失い、病に罹りやすくなります。体内エーテルは基本的に安定していますが、環境エーテルの乱れや濃淡の影響を受けます。ゆえにエーテルを用いた医療魔法を扱うときは、この乱れを敏感に感じ取り、正すという過程を踏みます。  エーテル操作には訓練が必要であり、素人がエーテルの均衡に手を加えようとすると、〈渾沌流出(オーバーフロウ)〉という暴走現象が発生します。〈渾沌流出(オーバーフロウ)〉はそれ以外にも様々な要因で自然発生することがあり、嵐や地震などの災害を引き起こします。あまりにも大規模で修復不可能な〈渾沌流出(オーバーフロウ)〉が発生した場合、人はこれを〈霊災〉と呼びます。 ■魔法とエーテルの属性  エーテルには大別して、火・水・風・土・霊・星の六つの属性があり、それらの偏りによって様々な現象を引き起こします。例えば水属性と霊属性のエーテルが強くなれば雪が降り、それに風属性エーテルが加わると吹雪となります。ゆえに水・霊・風属性エーテルによって満たされるナザリスカでは、晴れ間が覗くことの方が珍しい、氷雪に閉ざされた大地です。反対にバルバレミア半島では、主に火と土の環境エーテルが濃いために、土は乾き熱き砂となり、荒野が広がっています。  これらエーテルの偏りを操作して現象を導く術を「魔法」といいます。〈大霊災〉によって地上の文明が滅びた〈失われた時代〉に生み出されたこの術は、やがて〈魔禍戦役〉へと人類を誘い、再びこの星を存亡の危機に陥れることになります。  それについては後に「歴史」の章で触れるとして、魔法は我々にとって最も身近な技術です。火を熾したい時、魔法の使用者は周囲の火属性エーテルを操作します。燃え上がる火(属性エーテル)を制御するためには訓練が必要であり、魔法を会得しようとするものは、まずこの制御訓練をしっかり身につけさせられます。でなければ予期せぬ〈渾沌流出(オーバーフロウ)〉を招くことになるからです。やがて熟達した魔法使いは、魔法によって一時的に雨を降らせたり、大地を割ることもできるようになります。しかし、そこまでの研鑽を積むことができるものは稀です。 ■霊脈と霊渦  大地を水脈のように覆う霊的な道を、霊脈と言います。霊脈が通る土地はエーテルの供給が安定しており、人類は本能的にこの霊脈の上に都市を築いてきました。一方で高濃度のエーテルが滞留する環境下を霊渦と呼び、災害の頻発する不安定な土地として避けてきました。しかし霊晶(マナタイト)が発見されてからは、冒険者によって積極的に開拓が進められています。 ■霊晶(マナタイト)  霊渦においてエーテルが結晶化したもの、それを霊晶(マナタイト)といいます。霊晶(マナタイト)は純度が高ければ高いほど、エーテルの伝導率が高い魔法触媒として使用できます。霊晶(マナタイト)の採掘には高い技術が必要であり、またエーテル濃度の高いところに赴く必要があるために、霊晶(マナタイト)採掘師は冒険者が担うことも多くあります。採掘された霊晶(マナタイト)は魔法触媒として高値で取引される他、最近は不純物の多い霊晶(マナタイト)の利用方法として、魔具(アーティファクト)の動力にもなります。 ■魔物、妖魔  エーテルによって変質した動植物や霊的存在を、魔物や妖魔と呼びます。魔物はエーテル中毒を起こしていることが多く、人や集落を襲ったりします。これを討伐するのも、冒険者に舞い込む依頼の一つです。中には知能や自意識を保つ魔物もおり、強敵とみなされます。
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