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彼女だからって
気が付けばもう高校2年生の冬になっていた。文化祭というこの学校で一番大きな行事も終わり、次にある大きな催し物と言えば、来年の3月にある卒業式だけになった。
2年生のこの時期に受験勉強というストレスもなく、クラスメートたちは今年のクリスマスをどう過ごすかという話題ばかりを話し、お祭り気分である。
これを中3や高3の人が見たら腹立たしくして仕方ないだろう。
昼休み真っ最中の今、既にごはんを食べ終わったあたしは、特にやることもなくスマホでアプリをしね時間を潰している。
3日前に入れたばかりのアプリは、数独。今はレベル15。暇な時間を使って遊んでいるせいでわりと進んでいる。
「咲田夏波いるー?」
もう少しでレベル15の問題が終わりそうになった時、教室に聞き馴染みのある声が響き渡った。
‘7’を打ち込もうとしていたあたしはピタリと動きを止め、声がした方へ視線を投げる。
教室の後ろのドアを開けて辺りを見渡しているその男は、佐川凌平という隣のクラスの人だ。あたしと目が合うと凌平君は「あっ」と丸く口を開けた。
「夏波、呼ばれてるよ」
友人の美南に流し目に促され、渋々席を立つ。
ザワザワと雑踏に包まれている教室の中を進み、凌平君の元へ向かえば、「おー」と軽い調子で右手を上げて挨拶をされた。
その彼の右手には数枚のプリントが握られている。
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