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「ん。これ京助の」
凌平君はそのプリントを笑顔であたしに差し出す。
授業で配られるプリントだけではなく、今日の朝配られた講演会のお知らせが書いてある物も入っていた。
「咲田が京助に渡しといて」
「……なんであたしが」
「なんでって、咲田は京助の彼女じゃん」
さも当然のように言う凌平君に眉間に皺を寄せてしまう。
「……そうだけどさ」
「彼女ならいつでも京助に会うだろ」
そんなの偏見です、とは言えず仕方なくプリントを受け取る。黒い短めの髪をいつもきちんとセットしている凌平君は「よろしく」と笑って去っていった。
「(……彼女だからって)」
いつでも彼氏に会うわけじゃない。
いつでも彼氏に会いたいと思うわけじゃない。
会いたくないときだってある。
あたしの場合、会いたくないときが続いてる。
溜め息を零しながら自分の席へ戻ると、美南が「どうした」と眠そうな顔で首を傾げた。
「プリント貰った」
「プリント?なんでまたそんないらない物」
勉強嫌いな美南はプリントに嫌悪感丸出し。
「京助今日休みだからさ。あたしが渡せって」
「なるほどね、彼女は大変ですね」
他に誰か渡せる人がいるはずなのに。彼女だからって理由であたしに押し付けるのは如何なもんか。
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