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会議が終わると、あたしは王さまとおやつを食べてからこども部屋に戻された。
「トゥイッジ、今日はどんなおやつを食べたの?」
こども部屋のこどもは10人くらい。みんなすぐに寄ってきた。
「糖蜜のかかった白パンよ!」
「糖蜜かあ。いいなあ」
「僕、そんなの、しばらく食べてないや」
「王さまは、トゥイッジがお気に入りだもん」
みんながため息をつく中、アマ―リアは意地悪く言った。
「すぐに大きくなって、相手にされなくなるわ」
何か言い返そうと口を開いたとき、扉がノックされた。
こども部屋の扉をノックするのは、お城の中でひとりだけ。みんな慌てて背中を伸ばし、身の回りを片付ける。
「こどもたち、勉強の時間だよ」
入ってきた青の大臣が言った。
こどもたちは、毎日勉強をさせられる。教えるのは文官だけど、たまに大臣がやってくることもある。
赤の大臣が来たら、その日はお城の庭で遊ばせてくれる日だ。青の大臣だったら、 ひたすら勉強をする日。毎日が赤の大臣の日だったらいいのに。
「それでは、まずは臣民の権利と王族の義務について確認しよう」
青の大臣はいつもこの話をする。けれど、難しい言葉を使うので、みんなぼーっとしてしまう。
話が終わると、青の大臣はみんなを見回して、ため息をついた。
「こどもたち、ちゃんと勉強しなければいけないよ」
「でも、勉強って何の役に立つの?」
小さいミリイが質問した。
「将来、ここを出て行くときに役に立つのだよ」
「やだあ、ここを出て行きたくなんてないよ!」
ミリイの返事に、みんながうなずく。すると青の大臣は、怖い顔になった。
「いや。お前たちはここにいるべきではないのだ」
ひどい言葉だ。みんな驚いて、青ざめてしまった。あたしは、思わず立ち上がって叫んだ。
「そんなこと言わないでください! あたしたちはずっとお城にいたいんです!」
青の大臣が、冷たい目であたしを見る。
「トゥイッジ。お前は何歳だね?」
「9歳……いえ、10歳です」
あたしも、勇気を振り絞ってにらみ返した。
「お前はあまり、裁縫や刺しゅうの稽古に身を入れていないね。勉強や修養の時間も疎かにしているようだ。もうそろそろ、自分のことだけでなく、周りの人々の役に立つことを考えなければいけないよ」
あたしは王さまの役に立っています!
そう言いかけて、あたしは口をつぐんだ。何を言っても、どうせ。青の大臣はあたしたちが嫌いなんだ。
ふてくされてそっぽを向くと、また青の大臣のため息が聞こえた。
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