友情は最優先事項です

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チャイムが鳴ったというのに、屋上にどすどすと盛大な音を立てながら入ってくる女子生徒がいる。 不良だー 「ちょっとちょっと、一限からサボってるアンタにだけは言われたくないわね。」 「サボってないもーーん」 「……遅刻も欠席もせず、提出物すら忘れたことのないアンタがサボってるせいで、担任がぎゃーぎゃーうるさいのよ。早く戻ってよ。」 はいはい。 と、言いながらも屋上でゴロゴロと寝転ぶ。 「…谷口さ、反省してるよ。 あれ以上、身長縮む前に戻ってやってよ。」 「あんなバカ、気にしてなんかないよ。バカに言っておいてよ。あんたが気にするのは自分の身長だけにしとけって。」 「はは。谷口も好きな女子からそれ言われるとキツいんじゃない?」 目を見開いた。 ニヤッと嫌な笑みを浮かべながら見下ろす友人を足で蹴る。 「ちょっとそれ…」 「大丈夫。絶対誰にも言わないから。アンタから聞いた時に約束したしね。 でも男子って何であんなバカなんだろ? 誰が誰に告ったとか、付き合ったとか、フラれたとか。いちいち大騒ぎして、からかって…」 「今日みたいにね」 お返しと言わんばかりに言い返した。 思わず苦笑で返す友人からふいに目を逸らした。 「谷口のことはいいの?」 「いいよ。フラれた仕返しに私の好きな人を暴露するなんてサイテー。」 「そっかな…谷口ってそういうやつなのかな。」 沈む友人の声に思わず上体を起こした。 「谷口ってさ…自分の身長が低めなのネタにしてるじゃん?それってさ、クラスで1番背が低い森本くんのためなんだよ。森本くんから聞いた。」 「…ふーん」 「森本くんが、しつこくイジられたことがあって、思わず谷口の前で泣いたら、次の日から谷口が身長をネタにし始めたんだって…」 「へー」 「今日もさ、谷口はアンタを庇いたかったんじゃないかな。私はアンタの親友じゃん。なのにアンタが好きな杉山くんと付き合ったって聞いて、それでアンタの代わりに怒ってくれたんじゃないのかな。」 「バラしたことには変わりないし。 おかげで私は親友に裏切られ、挙げ句の果てにフラれた可哀想な女で、アンタは親友を裏切った悪女だよ?」 「みんなの視線が痛かったです」 「それのどこが優しさよ。谷口はさ、確かに悪いやつじゃないけど、頭が悪いというか…」 「違う!谷口はバカ正直なだけ!」 「頭が悪いのとどう違うのよ!」 「頭が悪いのはバカでしょ?谷口はバカ正直なのよ!」 「何が違うのよ!」 ぜえぜえと息が絶え絶えになったことで、言い争いは一時閉廷する。 「…何で言ってくんなかったのよ、」 もう一度寝転がり、ばかに晴れてる空を見ながら聞いた。 幼稚園の時に出会ってからずっとこんなバカな言い合いを繰り返してる。 何度も絶交を乗り越えた2人の友情は堅いと思っていた。 だからショックだった。 小学校の時から好きだった杉山が別の女の子が好きなことよりも、 クラス中(噂で流されることも考えればもはや学校中) にフラれた女と知られることよりも、 親友が何も話してくれなかったことに傷ついた。 「谷口が好きだって」 今ので問答でわかったよ。 好きだったんだね。 ごめんね。 何も考えずに「谷口に告られたー。幼稚園から同じの鼻垂れに興味ないよねー。」なんて言って。 でも谷口とは家がずっと隣同士で、家族みたいなもんだから、アンタの好きな男の価値を否定したわけじゃないんだよ。 伝わってたのかな。 「実は幼稚園の時からの片想いでした」 ええええっ!? ガバッと起き上がると、ピースする友人。 「うそ。森本くんの話を聞いてから。」 ちっ。と、舌打ちをひとつ。 「あの話を聞いて、幼稚園の頃からの谷口の言動を思い返すと、なるほどなーって感じでね。 気付いたら好きになってた。 アンタに打ち明けようと思ってた矢先に、アンタから告られた話を聞いて、うわー話にくいなーってなって。まあいつかのタイミングでって思ってたのよ。」 「そうだったのね。ややこしい。」 じろっと睨みつけてやる。 「あと、杉山くんとは付き合ってないから。フったから。ちなみにクラスの子達には説明したから。」 「え、杉山かわいそ…」 クラス中にフラれたことがバレた杉山であった。 「たとえ杉山くんが好きでもフルね。アンタと親友でいたいもん。」 「ああ、そう。でも私は別にあんたが杉山と付き合ってもなんとも思わないよ。」 え? 「あんたが親友でいてくれるなら」
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