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「これだから若い女の子は」
洸海はぶつぶつ言いながら近くにあった自動販売機で買ったミルクティーを差し出した。
「あ、大丈夫です」
「ミルクティー飲めないの?」
「好きだけど」
「あ、知らないひとに奢られちゃダメなひと? いいじゃん。黙ってたらわかんないって。正確に言えば知らないってわけじゃないんだし」
「いただきます」
そのミルクティーは熱すぎる上に甘ったるくてあまり好きではなかったが、外は雪がちらつくほど寒かったからか思った以上に美味しかった。
「落ち着いた?」
「はい」
「ひとが真面目に話してんのに笑うことないでしょうが」
洸海は余程不満に思っていたらしく、口を尖らせた。
「すみません。自分でもなんであんなに面白かったのかよくわからないんです」
「いや、それが聞きたいのよ」
「そんなこと言われても」
「あたしは笑わせるつもりがないのに笑われたわけよ。だったら、その理由を知りたい」
「すみません」
「え、なんで謝るの」
なんだかすごく面倒くさいことになったなと郁は思った。
「いや、笑ってすみません」
「違う違う。あたしは別に笑われてもいいのよ。いや、あそこで目立つのは嫌だから連れ出しちゃったけど、それとは別になんで笑われたか知りたいわけ。だって」
洸海は不意に口をつぐんだ。
「あの」
「ごめん。やっぱりいい」
「え」
「連れ出しちゃってごめんね」
洸海はひらと手を振って歩き出した。郁はぽかんとしてそれを見送った。
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