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泉のほとりの赤い薔薇
森の中をうつむきながら歩く女がいる。
彼女は打ちひしがれていた。
そう、彼女は恋に破れたのだ。
元々相手の男は身分が高く
彼女がいかに本気になろうとも
つり合いの取れない相手。
それでも彼女は諦めきれなかった。
それが例え不幸になろうとも。
そして今彼女は森の中を歩いている。
裸足の足は森に落ちている小枝で
傷つき血がながれていた。
衣服も茨にひっかかりところどころ
破れていた。
そして彼女は森の中の泉にたどり着いた。
その泉は不思議な力があるという。
彼女は泉の縁に座り込んで祈った。
私の愛の証を赤い薔薇にして下さいと。
それからしばらくして、一人の騎士が
泉にたどり着いた。
騎士は泉のほとりに一本の赤い薔薇が
あるのに気が付いた。
騎士はその美しい薔薇を見て
微笑み、手折ろうとして
赤い薔薇に手を伸ばし・・・。
泉の側には赤い薔薇と白い薔薇が
一本ずつ並んで咲いている。
それを知るのは泉の湖面のみ。
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