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一緒に困ってほしい
「恋人が欲しいんだ」
「分かる~」
「同意じゃなくて恋人が欲しいんだ」
「恋人が欲しいなら同意をするんだ」
「どういうことだよ」
「お前にこの本を紹介してやろう」
「『恋人を作る100の方法』……? 誰が書いたんだ?」
「私だ」
「お前かよ。何ご丁寧に製本までしてんだよ。騙されたじゃねぇか」
「騙されたと叫ぶにはまだ早い。俺の専攻が何かは知っているな?」
「心理学だっけ?」
「あぁ、厳密には認知心理学だがな」
「それがどうしたんだ?」
「認知心理学は、またの名を恋愛心理学ともいう。a.k.a.恋愛心理学だ」
「本当か!?」
「嘘だ」
「騙された!」
「今が騙されたと叫ぶのに適切なタイミングだ」
「俺を騙すのに本まで作って暇人かよお前。……うわ、装丁まで結構凝ってやがる。何時間かかったんだよコレ」
「いや、認知心理学の別名が恋愛心理学というのは少し過言かもしれないが、密接な関係にあるのは間違いない。……ふふ、まるで俺とお前のような関係だな」
「鳥肌が立ったからやめてくれ。フライドチキンにするぞ」
「罵倒のベクトルがズレてるぞ」
「それで、つまりその本を熟読すれば恋人ができるんだな」
「そんなわけないだろ。恋愛を舐めるな」
「だ、騙したな!」
「騙していない。本を読むだけで恋人ができて堪るか。そんな本があったら今頃聖書を抜いてベストセラーになっている」
「じゃあどういうことだよ」
「本を読むだけじゃない、本を読んで行動するのが大事なんだ」
「お前の決めポーズ、くそダサいな」
「時代が追い付いていない、か……」
「結局、その本は何なんだ?」
「お前のように恋人が欲しいと世迷言を垂れるだけでは一生できない。大切なのは行動することだ」
「イケメンは別だろ?」
「鏡を見ろ。しかし行動をしろと言われても何をすれば良いのか分からないだろ? つまりこの本は、じゃあどんな行動をすれば良いのか、ということが書いてあるんだ。分かったかクソ雑魚ナメクジ」
「何だとこの野郎。塩対応するぞ」
「だからさっきから罵倒のベクトルがズレてんだよお前」
「じゃあ早速1ページ目を読んでくれよ」
「相応の態度ってものがあるだろ?」
「さっさと読めよクソ雑魚ナメクジ」
「良いだろう」
「良いのかよ。お前の判定、使い古した100円の虫取り網くらいガバガバだな」
「1ページ目は空白、2ページ目は目次、3ページ目は執筆するにあたってということだから4ページ目から読んでいくぞ」
「だから何でそこまで凝ってんだよ」
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