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「あとは実践だけだな。ちょうどそこに女子がいるから試してみろ」
「分かった。若山、ちょっといいか?」
「なんか今日は展開が早くない?」
「若山、服を着ていて偉いな」
「褒められているのに嬉しくないのは初めての経験だわ」
「昨日も着ていたもんな。若山は偉いなぁ」
「何なら殺意が湧いてきたわ」
「服を着ようとしたのは社会通念上の理由か? 偉いなぁ」
「社会不適合者になってもいいから地獄に送りたい気分ね」
「どうだ?」
「92点だな」
「発展の余地あり……ってことか」
「バッテンしかないわよ」
「強いていうなら、昨日と変わっているところを褒めるべきだな」
「なるほど、少なくともこの1週間、若山は欠かさず服を着ていたから当てはまらないということだな」
「着ない日なんかないわよ」
「しかし違うところか……そうだな、リップを変えたところとか?」
「えっ……よく気がついたわね」
「やや明るめにしたんだな。快活なお前に似合っていると思うぞ」
「そ、そう? えへへ」
「良い感じだ。畳みかけろ!」
「それに──服を着ていて偉いぞ若山」
「ぐ…………っ!」
「いつもなら怒り出すところだが、ちょっと嬉しさを引きずっていて迷っている感じだな」
「しかし、褒めるところなんて服を毎日着ているところかリップを変えたところしかないぞ」
「それはリアクションになってないからだ。褒めるという行為はPIC/NICを意識するといい」
「ピクニック? 山でも登るのか?」
「説明が面倒だから割愛するが、要はアクションに対してめっちゃ早く反応することが大事、ということだ」
「具体例をピックアップしてくれ」
「例えば今、若山はレポートを書いてるだろう?」
「あぁ、昨日提出のやつな」
「現在進行形でのアクションに対して、ちゃんとやってて偉いな、という感じに褒めるんだ」
「ちゃんとやってないから今やってるんだろうけどな」
「これが先週のレポートだった場合、ちゃんとやってて偉かったな、になって感情の想起は小さくなる」
「今やってるの先週のレポートなんだけどな」
「うるさい!」
「つまり、だ。言葉にして伝えることは大事だが、伝え方も大事というわけだ」
「速球と変化球じゃあミットに響く音が違うということか」
「ホームラン……だな」
「へへ……」
「いや、どういう意味よ?」
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