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君と恋人になるたった1つの方法
「屋上なんて初めて来たぜ」
「小学校から高校まで屋上は封鎖されていたから、憧れがあったのよね」
「意外と風が強いな。ドラマなんかじゃあ弁当を食ってるイメージだけど、実際にやったら吹き飛ばされそうだ」
「そうね。所詮人間なんてものは吹けば飛ぶような脆い存在だもの……」
「どうしたんだ若山。ボケるのは俺と文戸の役回りのハズだろうが」
「き、緊張しているのよ。色々とね」
「そうか。……で、突然どうしたんだ。屋上に行こうだなんて」
「えっと……そ、その。あ、あのあの……ちょっと待って、口から胃が出そうだから」
「カエルかよ」
「すっ、好きだから恋人で、アンタは私よねっ!?」
「文章で福笑いでもしているのか?」
「まったく……見ていられないな、若山」
「文戸! 1日振りじゃないか、元気そうで良かった……っ」
「久しぶりみたいな雰囲気を出してんじゃないわよ……っていうか文戸が何でここにいるのよっ! 変態! ノンデリ! シロツメクサ!」
「シロツメクサのどこに罵倒要素を有しているのかは分からないが……恋愛相談に乗ってやった仲だろうが。少しくらいは感謝する素振りを見せてもいいんじゃないか?」
「恋愛相談?」
「つまり俺は両片思いをニヤニヤしながら見ていたというわけだ。良い性格をしているだろう?」
「良い度胸でもあるな」
「両片思い……って?」
「なんだ、まだ気が付いていないのか」
「そんなはずないだろう。消しゴム落としからずっとアプローチをかけていたんだし」
「えっ、ちょ、はっ!? どういうこと!?」
「ふっ……それじゃあ安登。ここまでやった授業のおさらいといこうか」
「あぁ。何一つ覚えていない。まっさらだ」
「”これをしたら好きになってもらえる”だなんて絶対的な方法はないから、フロイトですら『30年くらい研究しているけど未だに女心が分かんねぇよ』とか宣っている。けどな、恋人を作る方法が100通りあっても、最後に必要なことはたった一つだ」
「何だ?」
「勇気と覚悟だ」
「2つじゃねぇか」
「男女の友情は成り立たないというが、実際のところは友情と愛情が同時に成立しないというだけだ」
「つまり……今の友人という関係を失ってでも、恋人という新たな関係を築く覚悟はあるのか、ということか?」
「想いを口にするということは簡単でいて難しい。心さえあれば誰にでも出来ることなのに、心があるからこそ誰にでも出来ることじゃない。でも、若山は勇気を出したぞ。……安登、お前はどうするんだ?」
「俺は……」
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