一緒に困ってほしい

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「具体例を挙げてくれ」 「例えばお前が最近ハマっているソーシャルゲームだが、どこが面白いんだ?」 「どこって……キャラが魅力的だし、ストーリーが面白いよ」 「しかし貴様は推しキャラがガチャで出ないし、ストーリーも最近はスキップしていると言っていたではないか」 「うぅん……まぁ、その節があること否めない」 「実のところは惰性でやっているに過ぎないんだよ。けれど、そのゲームをやっているのはどうしてか、というのを考えるとき、面白いからという理由をでっちあげるんだ。実際のところはザイオンス効果との併発もあるだろうけれど」 「つまり、面白いからゲームをやっているんじゃなくて、何も考えずにゲームをしているけれど、面白いからやっているのだと脳が勘違いしているってことか? 何を言っているのか分からなくなってきた」 「まぁこういうのは理解に時間がかかるからな。そもそも言葉を聞いただけで分かるのは難しい」 「まぁ、何となく言いたいことは分かったよ。理由がないと気持ち悪いから、脳が理由を作り上げるんだな」 「そんなところだ。これをさっき恋愛心理学に当てはめるとどうなる?」 「つまり、とりあえず付き合えば、付き合っているのは好きだからと勘違いする?」 「パーッフェクツッ!」 「馬鹿かお前。だったら別れるカップルなんて皆無だろう」 「何も好意的な効果だけじゃない。例えばたまたま体調が悪いときにデートの約束をしていたとしよう。それでデートが楽しくないのは恋人のことが嫌いだから、という風にもなるんだ」 「ほほぅ。つまり恋人を作るには、とりあえず恋人を作ればいいんだな!」 「馬鹿かお前。そういうのはトートロジーっていうんだ。あ、違うわ。パラドクスか?」 「だってそういうことじゃねぇの?」 「典型的なプログラムを組めない奴の思考だな。話を戻すぞ。消しゴムを落とす話だ」 「消しゴムを落としたら……?」 「逆の例で考えてみろ。隣の席のやつが消しゴムを落としてきた。お前はどうする?」 「消しピン大会が始まるな」 「始めるな。とっとと閉会しろ」 「まぁ、普通に拾ってあげるかな」 「普通の人はそうだろうな」 「そのときに手が重なり合ってトクン……って感じか?」 「だったら消しゴムなんか落としてないで図書館でも行ってろよ」 「分かった! 会話のきっかけ、アイスブレイクってことだな!」 「冴えているな。だがそれは34ページ目だ。今やっているのは4ページ目だと言っているだろ」 「分かんねぇな……ヒントと正解をくれ」 「両方同時に貰ったら意味ねぇだろ。もっとシンプルに考えてみろ。物を落とした時に拾ってあげるのは、その人にとって優しい行動だろ?」 「まぁ、そうだな。嫌いな奴のだったら拾わないか切り刻んで燃やすし」 「選択肢が極端過ぎるだろ。で、親切な行動をするということは、その人に対してある程度は好意的であるわけだ」 「ん? ん~、まぁ、そうなる、のか?」
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