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「実際のところは認識論以外にも、悩みを共有することで連帯感を生むとかも言われているが、何にせよ、やることは同じだ」
「とりあえず消しゴムを落として、悩みを打ち明ければいいんだな」
「そういうことだ。ちょうどそこに女子がいるから試してみろ」
「分かった。若山、ちょっといいか?」
「いや、アンタたちの会話全部聞こえてたんだけど、その上でやるの?」
「オラ、拾え」
「ちょっと文戸、安登が何一つ話を理解していなかったみたいなんだけれど」
「若山、実は俺、悩みがあるんだ」
「え、もしかして私の声って聞こえてないの?」
「恋人が欲しいんだ」
「アンタは恋人が云々の前に、自分の頭の悪さを心配しなさいよ」
「順調なようだな」
「頭沸いてるの? アンタたち苗字が紛らわしいし、改名させるわよ?」
「恐ろしいこと言っているなこの女」
「いや待て、もしかしたら遠回しに『結婚して♡』と言っているのかもしれない」
「違うわよ。殺して戒名をつけてあげるって言ってんの」
「想像より数十倍も恐ろしいことを企んでやがった」
「なぁ、文戸、ちょっと手本を見せてくれないか?」
「ふっ、しょうがないやつめ。よく見ておけよ安登。そして……この恋愛マスターからテクを盗むんだ、ぜ☆」
「ねぇ、私いつまでこの茶番につきあえば良いの? レポートの途中なんだけれど」
「オラ、拾え」
「リプレイしてんじゃないわよ」
「観察者間一致率100%だな」
「何でこれでイケると思ったのよ」
「そう褒め称えるなよ。照れるだろ?」
「大体何よ安登。アンタ、私のこと好きなの?」
「好きか嫌いかでいえば好きだが」
「ふ、ふぅん。そうなの?」
「よし良い傾向だ。畳みかけろ安登!」
「おう! オラ、拾え!」
「だから消しゴムを投げるな!! さっきから足に当たってんのよ!」
「おい文戸、どういうことだよ。惚れるどころか怒っているんだが」
「いや顔を赤くするということでは怒りも惚れも同じ属性の感情だ。近付いていると言っても過言ではないだろう」
「過言でしょ。180°ベクトルが違うわよ」
「怒りの感情値ベクトルの対義は恐怖だぞ若山。覚えておけ若山」
「そうだぞ若山。だからお前は文学の単位がCなんだぞ若山」
「うるさい。ぶっ殺すわよ」
「さっきからどうした、上の下の顔が台無しだぞ」
「アンタは恋愛の前にデリカシーってものを学んできなさいよ」
「とか言いつつちょっと喜んでるな。畳みかけろ。化粧次第では上の中も過言ではないとか言ってやれ」
「よっしゃオラ! 拾え!」
「…………」
「すまん。俺が悪かった。だからそのどこから出してきたのか分からないノギスはしまってくれ」
「拾ってあげるわよ……アンタの骨をね…………!」
「今日の授業はここまでだ! また明日だ安登!」
「おう! じゃあな!」
「逃がすかぁぁぁぁぁ!!!!」
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