つまらない話題なんてない

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「話を戻すか。趣味を知るには、学校や会社以外の時間で何をしているかを聞けばいい」 「それがどうやって天気の話につながるんだよ」 「ロールプレイングで実践してみた方が早いかもな。俺がお前役をやるから、お前はツンデレツインテール幼馴染役(好感度41%)をやってくれ」 「ほとんど俺のことだな」 「真反対じゃない?」 「『やぁ、おはよう。今日は暑いね』」 「『べっ、べつにアンタの為に暑くしているわけじゃ、ないんだからね!』」 「カットだ」 「主演男優賞は狙えそうだったか」 「黙れゴールデンラズベリー賞。配役を無視するな。さっきのは幼馴染じゃなくて地球だったぞ」 「分かった。今度は真面目にやる」 「あぁ、真面目にな」 「あんな配役しといてよくそんなセリフ吐けるわね」 「『やぁ、おはよう。今日は暑いね』」 「『暑いね』」 「『こんな日は早く帰ってゲームをしたいよ』」 「『何のゲーム?』」 「『ドラゴンクエストⅡだよ』」 「カット」 「何でだよ」 「チョイスが渋すぎるだろ」 「今そこは絶対に関係なかったでしょ」 「確かにな。名作だからという点に甘えていた」 「何で反省してんのよ」 「『やぁ、おはよう。今日は暑いね』」 「『暑いね』」 「『こんな日は早く帰ってゲームをしたいよ』」 「『何のゲーム?』」 「『ドラゴンクエストXIだよ。ツンデレ以下略はRPGってやるタイプ?』」 「『うーん、私はスマホのソーシャルゲームをやるくらいかなぁ。ツムツムとか』」 「『そうなんだ。今日は学校が終わったら何するの?』」 「『今日はリサもミカも用事があるって言ってたし、家でYouTubeでも見ようかな』」 「『へぇ、どんなの見るの?』」 「『コスメとかネイルとかの紹介動画かなぁ』」 「『あー、ツンデレ以下略、お洒落だもんね』」 「『そ、そう?』」 「『うん、センス良いなぁって思うよ。今度の日曜日に服を買いに行くんだけれど、お昼ご飯を奢るから、よかったら付き合ってくれない?』」 「『鏡見て言えよ』」 「どうだ?」 「凄い、完璧だ」 「いや最後! 何で急にめっちゃ辛辣になってんのよ!」 「会話のポイントを整理していこう。まずは一つ目、『自分から趣味の話をする』だ」 「前回学んだやつだな」 「そうだ。『相手の趣味を知っている』という親近感を沸かせると同時に、『場の話題は趣味について』という共有テーマを作ることができる」 「相手も趣味の話がしやすくなるということか」 「二つ目は『自己開示と他者開示のバランス』だ」 「つまり?」 「質問ばかりしていると面接みたいになってウンザリするんだ。かといって自分のことばかり話していては相手のことが知れない」 「となると比率は1:1:1:1くらい?」 「パウンドケーキかよ。理想は自己開示が3割、他者開示が7割だな。まぁ初対面のときの場合だから、会う回数を重ねてきたら自己開示の割合も増やすべきだな」 「重ねるって、ミルフィーユかよ!」 「無理に対抗してスイーツつっこみをしようとすんな。意味が分からん。で、三つ目は『趣味の共有』だ」 「コスメやネイルに興味があるって言えばいいのか?」 「多少盛るのは良いが、嘘をつくのは一番よくない。さっきの例のようにシソーラスを遡って『ファッション』という括りで趣味を共有する感じだ」 「ちょっと勉強になるのがウザいわね」
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