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「最後が『クロージング』だ。ここが一番重要だな」
「船を用意するのか?」
「海水で溶けろクソ雑魚ナメクジ。さっきの場合でいうとデートの約束だ。あそこまでいかなくても、『次に会う理由』を作ることが大事だ。日付まで指定できればパーフェクト」
「ふむ。完璧に理解した」
「あとは実践だけだな。ちょうどそこに女子がいるから試してみろ」
「分かった。若山、ちょっといいか?」
「だからアンタらの会話ずっと聞いてたんだけど?」
「おはよう若山。今日は良い天気だな」
「外を見なさいよ。どう見ても土砂降りでしょうが。っていうか夕方だし」
「こんな日は早く帰りたいな」
「傘忘れて帰れないから、雨が弱くなるの待ってんのよ」
「今日は帰ったら何がしたい? ドラクエⅡ? ドラクエXI?」
「何でその二択なのよ」
「それじゃあ今度の日曜日、一緒にドラクエVを買いに行こうよ」
「下手くそ過ぎるでしょ」
「どうしてだ若山。名作だろ若山」
「全くだぜ若山。文句を言っていいのは3週して全員と結婚したやつだけだぞ若山」
「文句言っているのはゲームにじゃなくてデートの誘い方なんだけど」
「ったく見てられねぇな。手本を見せてやる」
「おはようから始まったらぶん殴るわよ」
「おはよう、若山……ってうぉい! 消しゴム投げんな危ないだろ!」
「そうだそうだ! うっかり恋に落ちちゃったらどうすんだ!」
「地獄に落ちればいいのに」
「まさか若山……ファイナルファンタジー派だったのか?」
「いや待て、テイルズ派やFE派の可能性も否定できない」
「どれも興味ないわよ。私、もう帰るから」
「おい待て、雨まだめちゃくちゃ降ってんぞ。コレ持ってけ」
「……折り畳み傘? 安登、アンタ他に傘を持ってるの?」
「いや、ないけど。女を風邪ひかすわけにはいかねぇだろ」
「ふ、ふぅん?」
「よし今だ安登、畳みかけろ!」
「よし!」
「消しゴムを振りかぶるな馬鹿! 投げたらくびり殺すわよ!」
「この女、前から思っていたが物騒過ぎないか?」
「まぁ、俺は文戸とショーシャンクごっこして帰るから問題ない」
「そういえばお前、映画観たのか?」
「観てないが?」
「何でドヤ顔してんだよ」
「そういうお前は観たのかよ」
「観てないが?」
「勧めたお前が観てないのはおかしいだろ」
「……ねぇ! その、私だけが借りちゃうのは申し訳ないからさ。えっと、もしアレなら入れてあげてもいいけど?」
「何でそんなに声が裏返っているんだ若山。もしかして相合傘に照れてるのか若山」
「遊んでそうな見た目して意外と乙女なんだな若山。かわいいぞ若山」
「……そうね、私、恥ずかしがり屋だから。照れ隠しでアンタたちを殺しちゃうかも」
「おい待て若山。傘は振りかぶるものじゃないぞ若山」
「……安登、傘を貸してくれてありがとう。血の雨を防ぐのに使わせてもらうわ」
「今日の授業はここまでだ! また明日だ安登!」
「おう! じゃあな!」
「逃がすかぁぁぁぁぁ!!!!」
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