副支配人川村

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朝、川村に呼ばれ今日は例の件の対応があるので私がインカム指示をしろとの事だった。川村が公休の時は私がしているが、横にいる時にするのは初めてで緊張する。 程なくして本部から連絡が入った。川村が話している。 「そうですか、でしたら相川ではなく私です。・・・・いえ、お言葉ですが相川のミスは故意ではありません。・・・・緊急のお客様対応があり長瀬から相川に替わる様に指示したのは私です。部下にしっかりとした教育をせずその仕事を指示をした事、その上チェックアウトで混雑の中、落ち着いて判断できる接客環境ではなかったにも関わらずフォロー出来なかった事。全て私の責任です。それに処分が副支配人であれば先方も納得いただけるのでは?」 私はモニターを見ながら川村の話に集中してしまっていた。そんな時も川村は私の肩をつつきひとつのモニターを指してアナウンスしろとジェスチャーをしている。慌てて意識をそちらに戻した。 「はい、では連絡お待ちしています」 川村は静かに電話を切った。 夕方、チェックインが落ち着いた頃、本部から連絡が入った。少しして電話を切った後、川村から「鳥取に行く」と聞かされた。私は精一杯平静を保ち返事をした。 「承知しました。お世話になりました。で、いつ?」 「5日後着任だ、引っ越しもあるから明日、明後日は出勤する。暫く君は休みが不定期になるから明日、明後日は休みなさい」 「では、今日が副支配人との最後のお仕事ですか?」 「そうだな、まっ珍しい事じゃないだろ」 「そうですね…あっ!沙羅さん!」 「会えないな、帰って来るまでにこの地を離れなければ…仕方ない」 川村はこんな時も淡々と話している。
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