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職人川村
私は川村の異動に動揺していた。佳人に会いたくなり店を訪ねた。
「真南どうした?」
佳人は直ぐに私の様子に気付き仕事の手を止め席に来てくれた。
「うん、ちょっと…あっ、お母さんにお花の折り紙ありがとうって言っておいて」
「わかった。それより少し聞いたよ、お客さんでS交通の人がいて…大変だったみたいだね」
佳人はある程度の内容は知っている様だった。私はその後の今日の事を話した。
「川村さんがいなくなるんだ…会社員て大変だな」
「仕方ないって言えば仕方ないよね」
私は諦め混じりの返事をした。
「前に真南、川村さんは冷たいって言ってたよね?俺、真南もだけど川村さんも本当に人が好きなんだなと思う。でなきゃあんな大変なホテルマンなんて出来ないよ。人が好きな人に冷たい人なんていない、川村さんが冷たいと見えるのは技術だと思うよ。俺は沙羅と一緒に楽しんそうにしてる川村さんしか知らないから…」
「技術?」
「そう、サービスを操る技術」
私は佳人の言葉で川村を理解出来た様な気がした。冷静沈着に判断する事が出来る人がいてくれる事により、スタッフは安心して100%の笑顔とサービスを提供出来る。それをするのが自分の役目だと川村の仕事ぶりからわかった。だから相川さんではなく自分の責任だと言ったのだ。
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