職人川村

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二日間の休みの後、オフィスに入った。モニターの前にいるいつもの冷たい背中はもう無い。私はそこに座りインカムを取ろうと引き出しを明けた。 【長瀬殿】 川村の字で私宛の封筒が入っていた。開けて見ると中にもうひとつ封筒と手紙が入っている。 【この封筒を沙羅に渡して欲しい。申し訳ない。君にしか頼めない。 世話になった。遠くから活躍を祈る。 川村】 川村らしく用件しか書いてない手紙。それが今は嬉しかった。 川村が去って1週間が経った。 仕事を終え佳人の店に向かっている。川村に頼まれた封筒を沙羅さんに渡す為に会う事になっていた。沙羅さんはどんな顔をしているだろう。不安だった。 いつもの窓際の席に沙羅さんはいた。私に気付き立ち上がって挨拶をしてくれている。その顔は変わらず穏やかな微笑みを浮かべていた。 「長瀬さん、ごめんなさい。お疲れでしょ?川村が変な事頼んでしまって…」 「いえいえ、お呼び立てしてすみません。これです」 私が封筒を差し出した。 沙羅さんは封筒を開けた 「ふふっあの人約束覚えていたんだ」 私に中に入っていたガーデンホテルズ宿泊券を見せた。 「あっ!沙羅さん鳥取に行くんですか?」 「違います。長瀬さん、後で連絡しますので部屋を取っておいてくれますか?」 「えっ?うちのホテルですか?」 「私が泊まりに行きたいって言ったら俺が異動になったらなって」 と、楽しそうに笑っている。
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