副支配人川村

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「失礼いたします。長瀬でございます」 「長瀬さん?今日のお花は何?」 奥様が座卓を指で小刻みに叩きながら不機嫌に聞いてきた。 「申し訳ございません。直ぐに別の花に替えさせて頂きます」 「もう、センスの無い花が入り口にあるだけで気分が壊れるわ!今から出掛けるから帰って来るまでに替えておいて!青い花ね!どいて!」 奥様は入口に正座で頭を下げている私の横を邪魔だと言わんばかりに大きな足音を立てて通り過ぎて行った。 ホテルの部屋は和室を基本とした部屋だ。 小上がりに飾る花はお名前とメッセージを添えて日毎に変えている。その花が気に入らなかったらしい。 青い花…今の時期にあるだろうか…。 「副支配人、本郷様ですが」 「何だ」 PCの操作をしながらの低い声。私は本郷様に呼ばれた訳を話した。 「それで?」 表情も変えず声も変えず訊ねて来た。 「今から花を探します」 「帰る時間はわかってるのか?」 「聞いてはおりませんが、旦那様がのガイドを持ってらっしゃいました。後、奥様は昨日の靴と同じヒールの靴を履いて行かれましたのでドライブかと思われます。夕食のお時間とお食事前にお風呂に入られる方ですので15時までには戻られるかと…」 「なら間に合うな」 「はい、間に合わせます」 青い花は取引生花店、近隣生花店を探しても無かった。あるにはあるが洋花ばかりでそれこそあの部屋に不似合いな花だ。途方に暮れた。 どうしよう…。頭を抱え考えあぐねている時、相川が話しかけて来た。 「長瀬先輩、昨日のデートどうでした?」 悪戯な目で私を覗きこんでくる。 「どうって…あっ!」 私はその問いかけである事を思い付いた。そして急いで川村の元へ走った。 「副支配人、沙羅さんに急いで連絡をとりたいのですが…」 「はっ?何で?」 「本郷さんの件で頼みたい事があります」 私の返事を聞きながら既にメモ用紙に沙羅さんの連絡先を書き私に差し出した。 「ありがとうございます」 直ぐに沙羅さんに連絡をしお願い事をした。 「わかりました。佳人が来るまでに用意しておきます」 そして佳人に連絡をし助けて欲しいとお願いをした。
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