副支配人川村

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インカムから本郷様お戻りの知らせが入った。私は803号室の小上がりで正座をしお迎えの体制に入った。これでお許し頂けるだろうか…。と一抹の不安はあったが出来る限りの事をした。 部屋担当が本郷様に「長瀬がお部屋にて待たせていただいております」と話ながら近づいて来る声が聞こえた。三つ指を着き頭をさげ…。 「お帰りなさいませ。申し訳ございません。をご用意出来ませんでした」 「ふふっ、やっぱり青い花なんて時期柄無いとは思ってたけど貴方ならどうにかするかと思って、でも所詮その程度…」 奥様はそこまで言い花器に目が止まり。 「何これ!」 【本郷様 明日の帰路のお伴にさせていただければ幸いです】メッセージカードとを用意した。 それは生花でなくても見る人が見れば判る物だ。目の肥えた本郷様ならわかっていただけると信じていた。 「生花は手に入りませんでしたが、土佐清帳紙の和紙を仁淀川ブルーをイメージした染料で染めて作りましたの花でございます。世界にひとつしか無い本郷様のお花でございます。どうかこの旅の記念にお納め下さいませ」 「えっ!土佐清帳紙?本当に?」 「はい、そこの紙漉氏にお願いし、急ぎ染料で染め花を折る事を得意とする方に作っていただきました。どうぞこちらでお許し頂き、納めていただけます様、お願い申し上げます」
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