冷たい職人

チェックイン

高知県土佐市「ガーデンホテルズ土佐」

全国展開するハイグレードホテルグループ。どのホテルもその土地土地の郷土色を活かした作りに徹する事をコンセプトとしている。ここ土佐のホテルも8階まで突き抜けた天井から国の伝統工芸に指定されている土佐和紙で光を和らげた照明がロビーを照らしている。

そのロビーに敷き詰められたカーペットは高知を流れる川の色、仁淀川(によどがわ)ブルー。その先には落ち着きある木材で作られたフロント。そこにコンシェルジュ長瀬真南(ながせ まみ)が口元に微笑みを湛え立っている。

フロント裏オフィスには副支配人川村啓介(かわむら けいすけ)が幾つものモニターを前に顧客データーが入ったPCをチェックしている。 メールを受信した。提携しているレンタカー会社からのお客様情報だ。

インカムから指示が流れる。
「川村より、803号室宿泊、本郷様2名レンタカー紺のレクサス、ナンバー4824後7分で到着。チェックイン前準備進める。担当者はフロント横で待機」
その他も細かな顧客データーを読み取り川村から指示が出る。

各ポジションからの「了解しました」が一斉に返って来る。

「後、長瀬」

「承知しております」
長瀬は落ち着き払った声で川村に答える。