幼なじみとの恋①

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幼なじみとの恋①

振られた。 もう、声をかけることすら出来ないほど、モノの見事にきっぱりと。 好きで好きでどうしようもなくて、ただ気持ちを押し付けた。 少しでも視界に入りたくて、 声を残したくて、 いつも笑顔の自分を見てほしくて。 望むばかりの自分よがりの恋は、最初から最後まで私だけのモノで、欠片すら拾ってもらえなかった。 泣くのを我慢してしかめっ面で帰ったマンションの前に、幼なじみがだらりと立っていた。 「どうだった、ってその顔見たら聞かなくてもわかった」 「……………」 「とりあえず部屋入るぞ」 愛想良くすればそれなりにモテるだろうに、いつもの仏頂面で言う幼なじみを見たら我慢の糸が切れてしまった。 ボロっと出た涙はもう止められなかった。 悲しい、つらい、切ない、苦しい。 たくさんたくさんアピールして、頑張って頑張って話しかけて、私全部で好きだったのに。 「マジかよ……」 ため息まじりで言った声が耳朶を掠った。 溢れる涙も鼻水も息も止まった。 ふわっと髪が頬に触れ、頭が肩にとんと乗った。隙間がないほどの距離、ようやく背中に回された腕に気付く。 「今ならつけこめっかなとか思うから泣くな」 身体の中を通して、ぶすくれた、でも篭もる甘い声が聞こえた。 男だった。 幼なじみは、幼なじみでも男だった。 それを、振られた日の、ボロ泣きしている今気付くなんて。 微かに震える唇が肩口にある。 散々聞いてもらった。 というか、聞かせた。 好きな人の、どんなところが好きか。 どれほど好きか。 好きな人とあったことをその日のうちに聞いてほしくて、部屋に突入して、勉強してるのを邪魔してまで何度も何度も聞いてもらった。 そして昨日、告白をすると言った私を、 この幼なじみは「まぁ、頑張れよ」といつもの口調で言って見送ってくれた。 いつからだろう。 たくさんたくさん知らないうちに傷付けたのかもしれない。 そう思ったら止まっただけで濡れたままの目からまた涙が溢れた。   「ごめ、ごめんーーー」 「……謝んな」 「で、も、こう、た、ごめ、んーーー」 「謝んなって」 「ごめ、んね、こう、ちゃーーーー」 肩口に触れた唇からふっと温い息がかかった。 「お前がこうちゃんて呼んだの、5年ぶりだな」 何故今日なんだろう。 何故今なんだろう。 でも今日しか、今しかなかったのかもしれない。 私がそうだったように、 ずっと幼なじみでいてくれた彼にとってはこの時だったのかもしれない。 止まらない涙と鼻水は、幼なじみのパーカーで何度も何度も拭われ、 でもそれでも辺りが暗くなるまで止まらなかった。
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