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「さあ」
ようじさんの声がした。
二人で話した日から2日経っていた。
着替えから出て来て腰に巻くタイプの長いエプロンをしていたら、もう一度「さあってば」と呼ばれた。
「え」
「さあちゃん」
「はい?」
「はい」
返事して上げた顔、またしても掴まれた手首が持ち上げられ、手のひらから少しはみ出るメモ帳が乗せられる。
「これ…」
「こないだ言ってたご褒美」
「あ、りがとうございます!」
黒いメモ帳は可愛さなんて微塵もなくて、
でも嬉しさと戸惑いと、身体の奥がぎゅんぎゅんするドキドキとで、思わず胸に抱き締める。
「今日も頑張っていきまっしょい」
三角巾からちょこっと出た前髪をつんと引っ張られた。
あぁ…お母さん。
私、好きな人が出来ました。
この人をもっと知りたくて、
もっともっと好きになりたいと湧くように思う。
これが、恋なんだ。
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