ようちゃんとさあちゃんその2

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ようちゃんとさあちゃんその2

ようちゃんと付き合いだして一ヶ月。 バイトの帰りに手を繋いで帰ることが日課になった。 もう秋が近くなった夜は少し冷える。 大きな手に包まれる右手が温かい。 「さあ」 「はい」 「さあちゃん」 「なんですか?」 「手、ぱーして」 「ぱー?」 開いた手にようちゃんの手が重なって、指が絡んだ。 ぎゅっと握られ、ようちゃんがにっと笑う。 「恋人繋ぎってやつ」 「………はい」 手のひらだけじゃなく、指の合間も熱い。 触れ合えるって、なんて幸せで照れくさくてときめくんだろう。 駅から私の住む部屋までは10分程度。 どちらからともなく歩く速度を緩めて、少しでも長く一緒にいたいとねだるみたいにゆっくりゆっくり進む。 マンションの前で止まる脚。 繋いだ手はそのままで、向かい合う。 「あ、レポートがあって、来週バイト入れないの今思い出した」 「え、そうなんだ…」 「寂しい?」 「……うん」 「くっそー!さあが可愛いすぎる!」 「よ、ようちゃん、声が大きいよ」 じろりと見られ、少し身を引いた私を覗き込むようにようちゃんが身を屈める。 一気に近くなった顔にドキドキが早くなった。 「寂しくないように呪いかけたげよっか」 「の、呪い?って?」 「ずっと俺のこと考える呪い」 「それ呪いじゃないよ」 思わず噴き出すように笑った私にようちゃんが顔を傾ける。 目の中に私を写したようちゃんの目が伏せられて、鼻先が触れそうになった時、咄嗟に手が出てしまった。 手のひらにようちゃんの息を感じる。
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