✱頑張ります〜れんさんと菜乃花番外編

7/7
685人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
遠くでにゃーんと甘える声が聞こえた気がして重い瞼をかたっぽ開けると、ぼんやりした視界にれんさんが映った。 ベッドボードに凭れ、あぐらをかいた膝の中にサーシャを抱いて撫でてる。 「なぁ、もう一人ここに住んでもいいか?」 「そう、菜乃花」 「サーシャも菜乃花のこと好きだろ?」 「プロポーズはなぁ…おっさんだぞ?」 「指輪はなぁ…」 「一年しか経ってねーのにせっかちじゃねーか?」 独り言のように話すれんさんに、律儀ににゃんと答えるサーシャ。 ようやく晴れてきた視界を流れる涙がまた曇らせる。 れんさんの膝の中で起き上がったサーシャが伸びをしてからやってきて私の顔に身体を擦りつけた。 「聞いてたのかよ」 「………聞こえてきたんです」 ふっと笑ったれんさんの手が伸びてきて、乱れた髪を直してくれる。 ついでのように鼻筋を流れる涙を親指が乱暴に拭う。 「菜乃花、引っ越してこい」 「…………プロポーズ、ですか」 「そうだ」 「色っぽく、ない」 駄目だ。 どんなに拭われても溢れてくる。 「生涯餌をやるっつってんだよ」 「…………はぃ」 全然色っぽくない。 ムードもない。 事後に寝落ちて、汗と涙でメイクもボロボロ。 おまけに涙で濡れたところにサーシャの毛もくっついた。 でも、どこまでもれんさんらしくてかっこよくてかっこ悪い。 そこが好き。 そこも好き。 どこもかしこも全部好き。 「れんさん、大好き」 「知ってる。一生言えよ」 「……はい」 にゃんと短く鳴いたサーシャがとととっと1階に降りていく。 「空気読める賢いヤツだろ?」 「空気読んだんですか?」 「初夜だろ?」 ニヤリと笑ったれんさんが覆い被さって抱き締めてくる。 「え、さっきしたのに…」 「俺はな、まだ枯れてねーんだよ」 「え、私無理です」 「それは身体に聞くわ」 嬉しそうな声は首筋に埋められた。 大きな背中に腕を回して許すと告げるとガブリと噛みつかれた。 「この跡が永遠に残ればいいのに…」 「歯型よりこっちにしとけ」 おでこにこつんとぶつけられたのは小さな四角い箱。 見たいのに意地悪なこの人はそれを許してくれない。 とりあえず、今はこの人に夢中になろう。 それからのことはまた後で───────── 滝田廉探偵事務所、明日は臨時休業になりそうです。 またのお越しをお待ちしております。 ✱長らくこの二人のストーリーにお付き合い下さりありがとうございました。 途中随分お待たせしてしまいましたが、なんとか書けましたので、楽しんでいただけると嬉しいです♡
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!