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✽ママのサンタさん✽
「さっちゃん、もう寝る時間だよ」
「やだ!しゃんたしゃんまちゅんやもん」
「起きてたらサンタさん来ないんだよー?」
「しゃっちゃん……ねんねしゅる…」
そこへちょうどお風呂から上がったパパが通りかかる。
ぐずつく娘をひょいと抱き上げてぷくぷくの頬にチュとキスをした。
「パパと寝るか?」
「ねる!」
パパが寝かし付けする夜はいつもよりテンションが高くなる娘。
その日もいつもより長く起きていた。
大きな欠伸をしながらリビングに戻ってきたパパに腕を広げて見せると、仕方ないなとでも言いたげに肩を少し上げてからパパがママを抱きしめた。
「お疲れ様。ありがとう」
「サンタさん来る?って何度も聞いてた。疑い深いのはお前似か?」
「知らない」
ひとしきり抱き締め合った二人は触れるだけのキスをしてから娘の部屋に忍び込む。
ずっと欲しがっていた娘の身体ほどもある大きな犬のぬいぐるみをベッドの側に置き、寝乱れた布団を直す。
しばらく安らかな寝顔を見てから夫婦の寝室へ向かった。
「本当に花束で良かったのか?プレゼント」
「うん。お花綺麗だったから嬉しい」
「もっとなんかなかったのか」
「だって、これまでにもうたくさん貰ってるから」
「それにしたって」
「じゃあ………おねだりしていい?」
「おう。何が欲しいんだ」
「…………赤ちゃん」
「は?」
「………もう一人……子供が欲しい」
その言葉にパパがふはっと噴き出す。
真っ赤な顔をして睨むママを抱き寄せ髪に耳に頬にキスを落としていくうちに、硬かった身体がゆるゆると解けるのを感じながらあちこちにキスをする。
「おねだりは聞いてやらないとな」
「………意地悪」
「好きだろ?」
「……好きだよ」
パパがママの名前を呼ぶ。
二人の時は名前で呼び合う。
昔のように。
「董子」
親になった今でも変わらない思い。
誕生日やイベントがあるごとに改めて強く思う。
出会えた奇跡。
思い合える奇跡。
それがずっと続く奇跡。
この人が側にいてくれるという安心感。
ぎこちなくでも少しずつ父親になっていく背中を見守るのもかけがえのない時間だけど、
こうして二人だけの時にする男の顔や声が何よりも好き。
「諒ちゃん、早く…」
「なに?ちゃんと言え」
甘く囁く声に、首筋に擦り寄って熱い息を贈る。
「キス………して」
嬉しそうに笑う唇に甘噛みすると、くくっと低い笑い声が漏れた。
「ちゃんとやるから」
あなたはいつもいつでも私の欲しいものをくれる。
一年に一回じゃないところがあなたらしい。
欲張りにしたのはあなたなんだから、
これからもずっと一年中私だけのサンタさんでいてね。
❇「愛を諦めたあなたといつか甘い甘い恋を」Xmas特別ver.❇
✱以前リクをいただいていた「もし二人に子供がいたら」を書いてみました。
こちらの短編集を読んで下さっているのはごく少数なのですが、だからこそお届けしたいと思います♡
いつも応援をありがとうございます。
皆様が素敵なXmasイブ&Xmasを過ごせますように༶・・ᗰદ૨૨ʏ ᘓમ૨ıડτന੨ડ・・༶
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