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テーブルの上に置いたままになっていた冷めたコーヒーを一口舌の上に含ませ、私は冷静を取り戻した。
「あーあ、鍵が汚れちゃったわ。きれいに拭かないと、また使えないじゃないの」
少し小高い丘の上の山小屋で、私はいつかのように簡単に部屋の中をきれいにした。再びここに来ることはあるだろうか。
「本当にここは静かな場所だわ。あなたがくれたこの別荘のおかげで、私はいつまでも贅沢な時間を過ごせるわ。
それにしてもこれ、何回洗っても赤い色が落ちないのよね。あなたにもらった大事な白い手袋だったのに、いつのまにかピンク色に変わってしまったわ。
でも、あなたのために大切に使っているのだから、構わないわよね」
赤く染まった手袋をにぎり、私は一人小屋を出て、そのまま山を降りていった。
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