第十二章 決戦

1/9
270人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ

第十二章 決戦

 英志達が下山した頃には既に日が昇り、登校時間に近かった。  楓は既に貴一に、二人が東京に向かう簡単な経緯と唯香に付き添うようスマートフォンでメッセージを送っている。間髪入れずに貴一からの返事も届いた。そこには学校を休んで唯香に付き添うつもりであることと、二人への激励が記されていた。  一方の英志は創志に、どうしても今日会いたいというメッセージを送り、承諾する旨の返事を受けている。  英志は楓を連れて家に戻ると、黒崎を呼んだ。 「これから急いで東京の兄さんの部屋まで送って欲しい」  黒いスーツ姿の黒崎は若干困惑した表情を浮かべ、英志と楓を交互に見る。 「楓様と行くつもりですか? お二人とも学校はどうするんですか?」 「休む。もっと大事な用なんだ。僕の学校への連絡も黒崎からしておいて欲しい」 「あ、私はもう母親に欠席する連絡をするよう伝えてあります」  楓が言い添える。実のところそれは大嘘で楓は両親に何にも言っていなかった。言えば反対されるに決まっているので、いっそ伝えないことにしたのだ。 「お父様が許可されるかどうかだけ確認させて下さい」  黒崎はスマートフォンを取り出すと宗悟にかけ、二言、三言言葉を交わした。そうして、英志達に向かって、 「承知しました。学校への連絡は後ほどしておきます。まずはお車にお乗り下さい」  と言うと、駐車場に向かった。ずらりと高級車が並んでいる。 「どの車にしますか?」  黒崎に聞かれて、「任せるよ」とだけ疲労の色を見せながら英志は言った。 「お疲れのようですね。お二人とも東京に着くまで眠って行かれると良いでしょう」  黒崎はEクラスのベンツの後部座席のドアを開けシートをフラットにすると、英志と楓を乗せ、ブランケットを渡す。そうしてすぐに車を発進させた。  黒崎の優れた運転技術のせいで車内はほとんど揺れがない。徹夜で登山をした英志と楓はあっと言う間に眠りの中へと落ちて行った。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!