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 私は霧乃(きりの) (しずく)。  名前の中に雨冠が二つもある、雨ばっかり降っているような名前。  雨女になるっきゃない!目指せ大ヒット!  ……大ヒットは晴れ女か。  せめて名前を「しずく」ってひらがなにしてくれれば少しはかわいかったのにと思ったりすることもあるけど、それなりに気に入っています。おおきに。  私は霧乃 雫。  大事なことだから二回言った。  どこにでもいる普通の女子高生。  容姿そこそこ、勉強そこそこ、運動そこそこ、家庭環境そこそこ、面白(おもろ)さそこそこ  お笑いやアイドルよりはゲームが好きだけど、それに打ち込んでいるってほどではないし、オタクなんて遥か彼方の領域です。 「名前の中に雨冠が二つも入っているけど、雫ってけっこう晴れ女やんな」と言われてしまうのが、唯一の意外性な部分。  どこにでもいる、大勢の中にいたら簡単にその中に埋没してしまうザ・平民、それが霧乃 雫。  でも今は、カミーラ・マルコリーニだ。  なんのこっちゃと思われるかもしれないけど、私自身もなんのこっちゃと思ってる。  唐突にそうなっていたのだ。  気が付いたのだ。  私はカミーラ・マルコリーニ伯爵令嬢で、なんとなんとレーデラック帝国の皇太子ビクトール第一皇子の婚約者でもある。  その肩書にふさわしいだけのとびきりの容姿を持ち、勉学に優れ、武術では同年代男子にも後れを取らず、帝国内で一番の権力と財力を持つマルコリーニ伯爵家の産まれ。  優良キャラによくある設定だと言えなくもないけど、実際に自分がなったら「設定盛り過ぎっ!」って叫びたくなる。  面白(おもろ)さに欠けるところが(たま)に傷。  でも傷は一つだけではない。  それよりも大きな大きな、本当(ほんま)に大きな傷が一つあることを私は知っている。  それを今明かそう!  カミーラ・マルコリーニ、イコール、悪役令嬢、なのだ。 『悪役令嬢ってなんですの!』
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