44.金色の庭を越えて。

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 インターホンが鳴り、テレビ前に座っていたあゆらが立ち上がる。 「何か頼んでいたかしら?」  するとあゆらより先に、アキが食事を中断して玄関まで走ると、ドアにカリカリと爪を立てた。   「珍しいわね、いつも宅配便に反応なんてしないのに」  アキの後を追うように、あゆらが玄関に近づいた時だった。 「どうも、野間口運送です」  ドアノブにかけようとした手が、止まった。  換気のために開けていた小窓から聞こえて来たのは。 「もう忘れてるかもしれんけど、五年前にお預かりしたでっかい荷物お届けに参りました」  関西独特のイントネーション、掠れたように低く、雄くさい声。    あゆらは加速する心音を抱えながら、震える手で、ドアを押し開いた。    そこには、確かにあの日、あゆらの心ごと預けた、その人がいた。  天井につきそうなほど高い背を少し丸め、ツバを持ち帽子を深くかぶった彼は、青空色のツナギの作業着に黒のインナーを合わせ、ススキの穂に似た金髪をそのままに、壁を背にして立っていた。その胸ポケットには見覚えのある、高そうなレースの白いハンカチが覗いている。  あゆらはドアを開けた状態のまま動けなかった。  何度も何度も夢にまで見て、再会を渇望した彼が、目の前にいるのだ。
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