43.大好きだからさようなら。

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43.大好きだからさようなら。

 清志郎の逮捕から四ヶ月が過ぎ、季節は秋の終わりに近づいていた。  あゆらは変わらず、望星高校に通っている。  幸蔵と杏奈は離婚し、当然杏奈に引き取られたあゆらは、鈴子の近所に引っ越した。  杏奈は料理の資格を活かし、鈴子のお菓子屋で働いている。  裕福ではないが、穏やかな暮らしが訪れた。  学校でのあゆらに対する反応は様々(さまざま)だった。  悪を裁いた正義の人と取る者もいれば、身内を捨てた冷たい人と取る者もいた。  だがそんなこと、あゆらにはどうでもよかった。  志鬼が側にいるだけで、どこまでも強くなれた。  そんな二人は今、小高い丘に位置にする、美鈴の墓に来ていた。 「会いに来るのが遅くなってごめんなさいね、美鈴」  あゆらは墓前に花を供え、線香をつけると屈んで手を合わせた。  気づけば隣に立っていた志鬼も手を合わせており、あゆらはその姿に胸を打たれた。  志鬼にとっては会ったこともない相手なのに、自分の気持ちを共有してくれるようで、あゆらは嬉しかったのだ。  この戦いは自分たちだけのものではなかったと、二人は思っていた。  美鈴、あるいは清志郎も——  幾人もの犠牲の上に、ようやく勝ち取った結果だった。 「私もいつか、優介くんに会いに行きたいわ」 「……そう、やなあ、だいぶ先になるとは思うけど」 「なぜ? 別に私はすぐにでも」 「……あー、しょんべん漏れそうやから便所行くわ」 「ちょっと、言い方を考えなさいよ」  ふざけるように股を押さえながら小走りする志鬼を、あゆらはあきれたように言いながら見送ると、もう一度美鈴の墓前に向き直った。
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