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2.仮初の日常
黒のリムジンを降りると、あゆらは学校の正門を背筋を伸ばし通過する。
ちょうど登校時間のため、仲のよい学友たちがあゆらを見つけると駆け寄って来た。
「おはようございます、あゆらさん」
「ご機嫌よう、みどりさん」
「あゆらさん、あの作品は素晴らしかったわ、今日の放課後、観に伺ってもよろしいかしら?」
「もちろんかまわないわ、ぜひいらして京子さん」
あゆらを挟んで歩幅を合わせ進むのは、岬みどりと西大寺京子だ。
美しい姿勢で歩く、上品な言葉遣いの少女たち。
それもそのはず、ここは国内でも有名な格式ある高等学校で、生徒は裕福な御令嬢、御子息しかいない。それもただお金がある、というだけでは入れない。親や祖父母まで、社会的地位として認められた学歴の高い職業に就いているなど、由緒正しさが求められていた。
代表的な職業としては政治家、医者、弁護士、警察のキャリアたちなど。
その中でも代々国を動かす政治家を生み出している家系の一人娘であるあゆらは、一目置かれる存在だった。
しかも所属している美術部で描いた絵が早々に大きなコンテストで審査員特別賞を受賞し、彼女の存在は磨かれた宝石のごとく、ますます高価に輝いていった。
美しい容姿に学友の羨望と尊敬の眼差し、何不自由ない家庭環境。
わがまま盛りの思春期真っただ中、これだけの条件が揃っていれば、あゆらが自分を中心に世界が回っていると勘違いしても仕方がなかったのかもしれない。
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