弐話

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 閻魔様は、並んでいる男女二人に視線を交互に向けている。型代に化けた加奈子、藤ヶ谷により現世での二人の出会いから、加奈子の隠している気持ち、藤ヶ谷の過去が演じられている。  ぼくと祖母は、両端でたたずみ事の次第をただ、黙ってみている。縁を決めるのは、祖母とぼくだが、ぼくらにはわかり得ない裏の顔まで間世では暴かれてしまう。 ※※※  駒井親子は母子家庭の団地生活暮らし、加奈子はバイトを掛け持ちしながら、るいを育てている日々。バイトで遅くなる日もあり寂しい思いをしている、るいに申し訳がないと思っている。 『こども食堂があるから、行ってみたら?』  シングルマザー同士のやり取りで近くに、こども食堂があることを知る駒井親子。こども無料。大人は三百円から五百円。 『友達から教えられて来たのですが・・・』  こども食堂に明るい声が響いている。おかわりは自由、大人も利用可能。子供連れの親子が笑顔を浮かべて食べる姿に緊張していた加奈子の表情が穏やかになり、肩の力も抜けていく。 『はじめまして。どうぞどうぞ』  明るく元気いっぱいのおばさんが笑顔を浮かべ手招きしている。給仕をする側に藤ヶ谷の姿が見える。 『るいちゃん、アレルギーはないかな?』 『大丈夫です。いいにおい』  鼻を動かし表情を緩め、他の子供たちと同じように手を洗い、お盆を手に持ち並ぶ、るい。るいを視線で追い続けながら、おばさんの話しに耳を傾ける加奈子。 『いろんな事情の家庭があって、大人もいろいろあるけど、美味しいものを一緒に食べてれば笑顔になれる。いつの間にか仲良しになって、家族みたいになるんだよ』  藤ヶ谷は笑顔で給仕をし、夕食を食べ終えた子供たちと机の上で勉強をしている。彼もいろいろあった大人の一人。 『学校サボりがちだったからさ、おじさん一緒に勉強していいか?』  食堂にいる彼は、優しく子供たちに好かれるおじさん。コピーした小学校三年のドリル問題を解いている。 『あの人にも何か・・・』  はじめて訪ねた子供にも優しく接している藤ヶ谷に微笑みを向けながら、隣に座るおばさんに問いかける。 『まぁね。気になるなら話してきたらいいよ?』  ニコッと笑い加奈子に向けて首を傾げているおばさん。戸惑いなかなか動かない加奈子を見かねて、おばさんの方から藤ヶ谷に声をかけて、藤ヶ谷が加奈子のいる場所へ向かう。二人の出会いは優しさとお節介から始まった。  ゴロゴロ、ドーーーーン!!  雷鳴がとどろき地面が揺れ動くと場面が変わる。今度は藤ヶ谷の過去へと進んでいく。
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