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「弥生、それ、絶対必要ないから戻して」
「そんなことないよ、リオに絶対似合うから。ね、これ買おう」
高く聳え立つ、この辺ではわりと有名なショッピングモールで、わたしは隣に立つ頭ひとつ分小さな弥生に声をかけた。
目をキラキラとさせて弥生が見つめるのは、女性なら誰もが身につけているであろう、ヘアアクセサリーだ。
ベロア、レース、キルトなど様々な素材で結われたリボンのバレッタ。金細工の華奢なピン。それはそれは華やかなものが並んでいる。
それを物色するのが、男である弥生だというのは別に問題ではない。プレゼントとして贈りたいひとだっている。その理由はきっとわたしの想像を越えるだろう。
けれど、弥生の場合は少し…いや、些かどうかしていると思う。
その贈る相手が、なんせわたしだというのだ。
外見を飾ることに、対して興味もない。この黒曜石のような深い黒色をした長い髪だって、弥生が綺麗に整えてくれるけれど、わたしとしては一つに括れればなんだっていいのだ。
そもそも。そもそもだ。
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