わたしはあなたを試してる

5/9
前へ
/9ページ
次へ
施設で分解されていく自分の身体。その際に奪われた右目は、今はもうどこへ行ったのかわからない。 そんな壊れたジャンクのわたしを救ってくれたのが、弥生の父親、深月だった。 機械工学の研究職員だった深月は、廃棄処分されることが決まったわたしを掬い上げ修理して、生まれた我が子ーー弥生のパートナーアンドロイドとして、わたしにふたたび生きる道を作ってくれたのだ。 わたしはできることなら、深月のパートナーアンドロイドになりたかった。 わたしに触れる手が、とてもあたたかったから。…もっと、その手でわたしに触れてほしい。そう、思った。今でもあの感覚はまるで昨日のことのように思い出せる。 しかし彼にはすでにパートナーがいた。そのアンドロイドを見て、わたしは電気に打たれたショックを思い浮かべたのを、今でも如実に覚えている。 深月のパートナーアンドロイドは、他の量産型アンドロイドとは比べ物にならないくらい美しく、品格のある物だったのだ。 屈辱だった。比較されているみたいで。お情けをかけられたみたいで。 腹立だしかった。馬鹿にされてるみたいで。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加