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だからわたしは、わたしを生かしたことを後悔させてやろうと思った。
深月の息子ーー弥生に、その矛先を向けてやろうと、そう思った。
だというのに。
「リオ!ほらほら、見てみて〜!」
会計を済ませてわたしの方に駆け寄ってくる弥生は、花が綻ぶような笑顔をしていた。
幼顔のため、あどけなさがまだまだ色濃く残っている弥生は、よく補導などで警察に声をかけられるくらいだ。
「…いいって言ったのに」
わたしの前にやってくるなり、そのショップの包を丁寧に開く。中から現れたのは、金糸で縁取られた、紺色の髪紐だった。
「リオにすごく似合いそうだと思って」
弥生は器用にその髪紐を手に持ち、わたしの後ろに回った。
「リオ、ちょっと屈んで」
弥生は、わたしより少しだけ身長が低い。この時期の男の子は勢いよく身長が伸びる子とそうでない子がいるみたいだが、弥生は後者なのだろう。
渋々、わたしはその身を屈めた。
弥生は爪先立ちになって、1つに結んでいるわたしの黒髪を優しく撫でて、そのヘアゴムの上にリボンを結いはじめた。
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