三、

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 祖父は警察官に促されるままに壇上から下りた。下りた瞬間に周りを取り囲まれ、そのまま扉に向かって歩き出す。  集団は真横を通り過ぎようかというところで一度足を止めた。 「これで満足か」 「え?」 「これでお前達は満足か」  お前達が誰を指しているのかはわからない。吐き捨てるような言葉なのにその声に憎しみは感じられなかった。 「城之内家の信頼は地に落ちた。終わりだ」  寧ろ果てしない絶望と悲しみを帯びているようで、ここで放ってしまったらまた会えなくなる気がする。 「終わりなんて言わないでよ。ずっと止まっていた時間が動き出すだけ……今日から始まらないといけないの」  祖父が憎いわけでも城之内家を潰したいわけでもない。ただこの不毛な連鎖を終わらせたかった。誰も幸せになれない。それどころかたくさんの人を巻き込んで、傷つく人を増やしているだけ。それだけはわかってほしい。  祖父は何も答えてくれなかった。代わりにしゃがれた声が一樹と秀樹に向けられる。 「……城之内の株は既にお前達に四分の一ずつ贈与してある。後は好きにしろ」  祖父はそれだけ告げると、再び歩き出した。警察官によって扉が開かれ、人の塊が外に出きるとまた閉められる。マスコミも祖父の部下達も取り残されまいとついて行った。残ったのは咲希達だけだ。 「……これからどうなるんだ」  おずおずと声を上げたのは尚人。 「校則とか反省棟とかがおじいちゃんのせいって事は……もう怖いのはなくなるって事⁉︎」  心菜は右手で尚人の制服の裾を掴んだまま、興奮したように空いた左手を口元で握り締めた。
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