三、

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 ホテルの外はすごい事になっていた。  まずガラス張りの扉の前には大勢のマスコミ。咲希達が姿を見せると同時に何台ものカメラが向けられ、眩しい程にフラッシュが浴びせられる。  そして、その奥にいた。その微笑みを見るだけで安心できる。何年経っても何年離れても、絶対に味方だと、想ってくれていると自信を持って言える。 「姫! 康介!」 「姫! 康介先輩!」  呼びながら一歩ガラス扉の外に踏み出す。だけどその瞬間、真横から衝撃が襲った。 「よくやった!」 「偉かった! 見てたよ!」    ーーどこにこんなに隠れてたんだろう。  思わずにはいられない。正面を見ると、姫は悪戯が成功したから得意げな笑みを浮かべている。 「あーもう! 可愛い可愛い! ハグー!」 「慧はもう身長変わらないな!」  ここぞとばかりに抱き締めてくれる柚子先輩に、労るように慧の肩を叩く蓮先輩。 「心配したんだぞ!」 「よく頑張ったね、お疲れ」  肩には玲央の手が乗せられて、由羅は下の弟妹全員に笑いかけた。でもそれだけじゃない。 「咲希、慧!」  園香先輩はまた綺麗になった。 「良かったぁっ……怖い事されなかった⁉︎」  亜実先輩は涙を浮かべていて、本当に心配をかけてしまった事が伝わってくる。 「慧、咲希、よく頑張ったな! 海里は来れなくて拗ねてる」  変わらないお兄さんぶりを見せてくれるのは雄貴先輩で。 「海里先輩ねー、今二人目お腹にいて悪阻で外に出れないの! でも電話繋げてるから後で話してね!」  萌絵先輩がそれをフォローする。 「咲希っ! 良かったっ……ほんっ、ほんとにっ」  健司先輩は最早言葉になっていない。清次郎先輩が肩を叩いて励ました。  皆いた。  大好きな先輩達が皆、来てくれた。
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