三、

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 このニュースはセンセーショナルな事件として日本だけでなく世界中に報道された。  国の経済を担う名家が国を裏切り独立を企てていたという話題性、新しい国の国民にするために閉ざされた学園で生徒達を管理していたという異常性、そして裏で動いていた大企業や名士の数。全てが前代未聞だ。  しかも生徒の生活は三年前の脱走で改善したと思われていたにも関わらず、実際は不条理な校則や反省棟による恐怖で縛られていた。外に助けを求めようにも接触すらできない。家族には多額の口止め料と共に圧力がかけられ、誰も声をあげなかった。  パーティー会場の映像と共にこの話が世界中に広まると、あらゆる場所から抗議の声があがった。人権擁護団体やボランティア団体の結成、デモ活動にまで繋がり、生徒の保護が求められ、中には移民として受け入れると表明する国まであった。  こうなってしまえば国も最早穏便に片付ける事はできない。いかに国を支える名家であろうと、大企業であろうと、著名人であろうと、捜査・摘発をせざるを得ない。  国中がネデナ学園の問題で揺れる事となった。  だから。 「はーい、自分の家だと思ってゆっくりしてね」  当事者である咲希達はすぐに学園に戻るわけにはいかなくなった。聞き取り調査もあるらしいし、生徒をそんな学園に戻していいのかなんて議論も起きているらしい。  滞在先となったのは懐かしい上に勝手知ったる姫と康介の家。 「服や必要な物は園香達が届けてくれるわ」 「ありがとうございます!」 「あ、部屋はどこでもいいけど……咲希と慧は前に二人でお昼寝した部屋にしましょうか!」 「ちょっと姫っ!」  今まで気を張り詰めていた分、力が抜けて自然に笑顔になる。 「すっげ……」 「ここが康介の家……?」  二人の家が初めての尚人と心菜が、その大きさに口を大きく開けたのはご愛嬌だ。
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