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そんな中、だんまりを決め込む兄弟が二人。一樹と康介は難しい顔をしたまま、口も開かなければソファーに座る事もない。ただ部屋の隅に立ち尽くす。
痺れを切らした姫が微笑みながら階段を指さした。
「少し話してきた方がいいんじゃない?」
二人は尚も何も言わない。となれば私が動くしかない。
「慧、ちょっと待ってて」
「ああ」
慧に断って立ち上がり。
「皆、行こ」
「え、ああ」
「うん」
由羅と玲央、尚人と心菜に目配せして。
「二人も!」
二人の腕を引いて促した。二人はそれには大人しく従ってくれた。
「二階の右奥の部屋なら全員分の椅子もミニ冷蔵庫もあるわ」
「はーい!」
姫の声に背を押されながら二階へと上がる。教えられた部屋には確かに全員分の椅子とミニテーブルが置かれていた。言うなれば小さな談話室だ。全員入り切ると同時に扉を閉める。
一樹が口を開いたのはその直後だった。
「お前は知ってたのか」
その言葉は康介に向けられていた。六つの視線が集まる中、康介はちらりと一樹を見て、またそっぽを向く。
「ああ」
「何故咲希にも話さなかった」
主語はない。だけど何の事を指しているのかすぐに理解した。
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