三、

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 それからは嬉しい事の連続だった。  まずは皆で食事。一樹は帰ってしまったけれど、それでもまた皆で食事ができる時がくるなんて思いもしなかった。 「え? 玲央商社マンなの⁉︎」 「そ。頑張ったんだぞ? 心菜も大きくなったな!」 「すごーい! じゃあ美味しいご飯食べさせてもらおーっと! ね、いいでしょ⁉︎」 「心菜、あんたいい加減にしなよ」 「由羅には言ってないもん! お姉ちゃんと玲央に言ってるの!」 「自分に甘い人間選んでるだけでしょうが! 言っとくけど家に帰ってきたって私も住んでるんだから。甘やかさせないからね!」 「ひどーいっ! 自分だって散々好きにしてたくせに!」  心菜が甘えれば由羅が嗜め。 「まあ飯くらいはいくらでも連れてくよ。あ、高いもんはダメだからな!」 「嘘だろ⁉︎ いいの⁉︎」 「当たり前だろ! ってーか学園にいた時だって奢ったじゃんか。あ、尚人も卒業して働き出したら心菜と咲希には何か奢ってやれよ?」 「……うわあ、まじかー」  玲央がかっこいい事を言えば尚人が目を白黒させる。  ずっと思い描いてきた兄弟との食事に、半年以上ぶりの賑やかな食卓。頬が緩んで何度も手が止まりそうになったけれど、何とか姫が作ってくれた食事に舌鼓を打った。 「賑やかだな」  カレースプーン片手に、隣に座る慧が呟いた。驚きと呆れが混ざったような声だけど、否定じゃない事はわかってる。 「うん、賑やか」 「良かったな」 「うん」  頷いて、またこの光景を目に焼き付ける。 「そうよ。心菜も一年半で卒業なんだから将来の事も考えなね? 働くにしても進学するにしても一度くらい皆にご飯作ってよ」 「えー」 「えーってね。奢ってじゃなくて作ってって言ったのよ?」 「心菜作れないもーん。あ、お姉ちゃん! お姉ちゃん作って?」 「咲希に頼らない!」  由羅がいて、心菜がいる。 「そうだ、家に顔出すのか?」 「え、行って平気なのか?」 「……連絡はしとくが暫くはマスコミが張ってるだろ」  玲央がいて尚人がいて康介がいる。 「それかここにいらしていただく? あ、咲希。チキンも食べてね。柚子一推しの自信作なのよ?」 「はーい!」  姫は本当のお姉さんになってくれたし、一樹とも仲直りできた。そして。   「慧もどうかしら?」 「美味しいです。な?」 「うん!」  隣には常に慧がいる。
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