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ささやかな日常のようでかけがえのない奇跡。激動の一日で体は疲れているのに終わるのが惜しい。
「ほら、そろそろ寝ないと。これから忙しくなるのよ?」
結局眠りについたのは日付が変わって姫に追い立てられてからの事だった。
朝。目が覚めて一階に降りると、姫の悪戯っぽい笑みの理由がわかった。昨夜より更に大きくなったダイニングテーブルには思ってもみなかった人達の姿がある。
「おはよう」
無地のワンピース姿なのは最後に見た時と同じ。でも、もうその笑顔に陰りはない。
「春奈さんっ!」
「会いたかったっ!」
咲希が叫んだ瞬間、春奈さんは音を立てて椅子から立ち上がった。
「元気だった……は変か。連れて行かれたって聞いてずっと心配してたの。酷い事されてない⁉︎」
一緒に過ごした時間は長くはない。でもずっと同じ部屋で暮らした。お互いを信じて秘密も作戦も全て話した。心から信頼できる姉のような存在だ。
「はい、大丈夫です!」
「良かったっ……さ、結坂さん」
「名前、呼んでくれるんじゃなかったんですか?」
「ノート、読んでくれたんだ」
「当たり前じゃないですか! 春奈さんノートにたくさん助けてもらったんですよ!」
「良かった……ありがとう、咲希」
この人は昔からそうだ。本気で他人を心配してくれる。自分の方が辛い目にあっていても、友人達や咲希を心配してくれた優しい人。
その人が変わらず想ってくれていた。そして憂いもなく笑っている。何より。
「何で皆さんがここに⁉︎」
変わらず高宮先輩達と一緒にいる。その事実が嬉しい。
咲希が尋ねると、空いた椅子の隣に座る高宮奈津紀は楽しそうに笑った。
「上司に呼ばれたのよ」
「え⁉︎」
「私達、今御堂さんの所で働いてるの!」
奈津紀の向かいに座る野村葉子もVサインを作って続く。勢いよく姫を振り返れば。
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