三、

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「高ランクの優秀さは私達が一番よくわかってるでしょう? 政府系では働きたくないと言っているし、市場はまだその価値に気付いてない。最高の青田買いだと思わない?」  得意げに言ってのけた。  姫が用意してくれたサプライズはこれだけでは終わらなかった。  夕食と負けず劣らずの賑やかな朝食を終えて由羅や春奈さん達が帰ると、入れ替わるようにワゴン車が敷地内に入ってきた。 「お待たせしましたーっ!」 「ありがとう、ご苦労様」  運転席から勢い良く降りてきたのは蓮先輩だ。 「蓮先輩!」  玄関から飛び出して出迎えると、手を振って応えてくれる。 「おう、ちゃんとご飯食べたか?」 「それはもう! 今、春奈さんや奈津紀先輩達が来てくれて」 「そっか、それは良かった」 「蓮先輩は?」 「お前らにお客さんを連れてきたんだよ!」  蓮先輩は慧の問いかけに笑って答えた。そしてその笑顔のまま後部座席の扉に手をかける。思いもしなかった人達が降りてきた。 「一条君、結坂さん」 「二人共、久しぶりね」  それはネデナ学園の厳しさを伝えながらも何度も庇ってくれた、最後には信じて一緒に戦ってくれた人達。 「工藤先生!」 「叶先生!」  揃って叫ぶと。 「あらま、声ぴったりね!」 「元気そうで良かった」  二人は嬉しそうに笑ってくれた。ネデナ学園にいた時のような憂いの残る表情でも、無理矢理作った妖艶な表情でもない。心からの笑顔だ。  そして、二人だけではなかった。 「紹介するね、僕の妹だ」 「はじめまして。お話はたくさん聞いてます」  続いて降りてきたのは長い黒髪をサイドで結った穏やかな雰囲気の女性。  こうして見ると確かに美由希さんに似ているかもしれない。でも違う。 「助けてくれて、本当にありがとう」  笑顔を取り戻した美紗さんだ。
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