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三人は時間をかけて色々な事を話してくれた。
今は地方の田舎町で三人で暮らしているという事、小さな中学校があってそこでも工藤先生は教師を、叶先生は保険医をしているという事、美紗さんは今年通信教育で高校を卒業して、今は保育士を目指して専門学校に通っているという事。
そして。
「おめでとうございます!」
「ありがとう」
美紗さんの高校卒業と同時に二人が籍を入れたという事。
「と言っても元々一緒に暮らしてたし、何も変わらないけどね!」
「何言ってるの! 彩花姉が正式にお姉ちゃんになってくれたんだよ⁉︎ 全然違うよ!」
「あー、もう! 美紗ちゃーん!」
「こんな感じで仲良くやっているよ」
叶先生と美紗さんが戯れ合うのを横目に、工藤先生は朗らかに微笑んだ。
学園にいた時とはだいぶ印象が違うけど、きっとこれが本来の三人の姿なんだろう。美紗さんの脱落と共に当たり前の日常が奪われた。そして、それを奪ったのが学園であり祖父だ。
「美紗さんは……城之内家に、祖父の所に連れて行かれたんですよね?」
咲希が切り出すと、美紗さんの顔は僅かに強張った。
ーーやっぱり。
嫌な予感はよく当たる。
「あなたを閉じ込めて酷い扱いをした事、祖父に代わって謝ります。本当に申し訳ありませんでした」
謝っても奪った時間は戻らないけれど、頭を下げずにはいられなかった。
「そんな! 咲希さんが謝らないでくださいっ!」
「でも……」
「本当にやめてくださいっ!」
美紗さんの慌てた声に恐る恐る顔を上げると、美紗さんは勢い良く首を横に振った。
「確かに辛かったです。自由も工藤美紗っていう名前も無くなって、希望なんて何もなかった。でも、今はその分まで幸せなんです! 咲希さん達のお陰で二度と会えないと思っていた家族にまた会えた! もう怯えて暮らさなくて良くなった! 感謝しかしていません!」
その隣では工藤先生と叶先生も笑いながら一つ頷いてくれる。それに救われる。
「ありがとうございます……」
息を吐き出したのと同時に、慧の温かな手が背を撫でた。
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