三、

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 更にはそこに。 「肉のお通りだぞー!」 「奮発したわよー!」  姫や康介の先輩、小池正義先輩に添島和葉先輩達もやって来る。  全員が全員、先端技術科仕込みの連携と手際の良さで用意をしてくれるものだから、広い庭はあっという間にバーベキュースペースへと変貌した。あまりの早さに手伝う隙もない。  慣れた咲希と慧ですら戸惑う早さ。先端技術科バーベキューを体験した事のない二人にとっては異次元で。 「何だこれ……本格的過ぎるだろ」 「え、こんなのやるの? 先端技術科……」  尚人と心菜はぽかんと口を開けた。  炭起こしが終わり、お皿が並べられ、最後に姫が切った野菜を出してくれれば準備完了。 「では……」 『いただきます!』 「たくさん食べてね」  懐かしいバーベキュー大会が始まった。 「広い庭にしたかいがあったわ」  姫は揃った寮生達にコロコロと笑い。 「康介先輩、ちゃんと食べてくださいよっ!」 「ああ」  相変わらず我関せずで端の席を陣取る康介には蓮先輩が取り分けて差し入れてくれる。 「園香、覚えてるか? 悪ノリしてステーキ丸ごと串に刺してバーベキューしたの」 「ええ、勿論。人数分焼くの大変でしたよね、懐かしい。皆、ちゃんと食べてる?」  清澄先輩と園香先輩は昔話に花を咲かせながら大量のお肉を捌いてくれて。 「雄貴先輩、望美ちゃんのご飯できたよー!」 「サンキュー」  柚子先輩は雄貴先輩の膝の上に座る望美ちゃんにメロメロらしい。  本当に豪華。あまりに懐かしくて楽しくて嬉しくて。先端技術科の皆に知られたら。  ーーきっと。否、絶対に羨ましがられる。 「……皆にずるいって言われそうだね」 「だな」  二人で同じ事を考えて笑ってしまう。 「あー! 二人がイチャイチャしてる!」 「してませんって!」  柚子先輩の叫びに返す言葉はぴたりと重なって、また笑いを誘った。
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