三、

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 清澄先輩が切り出したのはバーベキューも終盤、デザート串に入ろうかという時だった。 「咲希、慧。尚人君と心菜さんも……これからどうしたい?」 「え?」 「どういう……」 「学園に戻らないという選択肢もあるんだ」  抽象的な問いかけに聞き返すと、思いもしない言葉が返ってくる。困惑する弟妹達に康介が付け足した。 「報道が過熱してる。選択肢どころかお前らを保護すべきだ、戻すべきじゃないっていう世論の方が多い。8年の三人は卒業資格も認められるだろうし、心菜も今なら好きに他校へ編入させてもらえるだろう」  場はあれだけ賑やかだったのが嘘のように静まり返った。 「あなた達はどうしたい?」  姫の声が響く。  姫も康介も園香先輩も柚子先輩も蓮先輩も雄貴先輩も、皆真っ直ぐこちらを見ている。  ーーどうしたいか?  慧の顔を見る必要もない。 「学園に戻ります」 「戻ります」  学園に、皆の所に戻るために頑張ってきたんだ。  問いかけから間もおかず重なった言葉に、先輩達の表情がぱっと明るくなったのが見てとれた。 「そうか……」 「絶対に戻るって約束して来たんです」 「揃って卒業したいですから」 「ならまた二人と暫くお別れしないといけないのね」  姫の口角も綺麗に上がった。  これで二人決まった。残るは二人。 「お前らはどうする?」 「あー……」  康介の投げかけに、尚人は視線を宙にやった。
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