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わかった事は三つ。
一樹と城之内先輩は後継者争いをしていて一樹が後継者に決まったらしい事、真瀬先輩はわからないけど蘭沢先輩には今のところ敵意はないらしい事、そして目の前の男性が祖父だという事。
それ以外はわからない事だらけだ。
週に二度の夕食の席でも、つい顔を見てしまう。眉間に皺を寄せたまま黙って食事をする姿には、気難しそうな印象を受ける。
ーーこの人がおじいちゃん。
何も教えてくれない。それどころかこうして一緒に食事をしていても、話しかけてもくれない。
でも、今日は違った。メイン料理が運ばれてきて、部屋にはナイフとフォークがお皿に触れる僅かな金属音だけが響いていた。
祖父が口を開いたのはそんな中だ。
「……数学が得意なようだな」
「……え?」
いきなりの事に空耳かとさえ思った。
ハッと顔を上げても、目が合う事はない。それでも確かに祖父の口は動いている。
「報告は受けている。授業態度も良く頭の回転もいいとな」
「……はあ」
「足りなかった部分についても素早く吸収しているようで何より」
これはもしかして。
「……これからも励むように」
「……はい」
褒められているのかもしれない。そしてその予想は正しかった。
「それでこそ……」
祖父はそこで言葉を切った。思わず口から出てしまったと言わんばかりだ。
だから賭けに出た。
「……あの時のお爺さんですか?」
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