三、

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 婚姻届の証人。 「私達が……?」 「ええ」  信じられなくて尋ねれば、また笑顔と頷きが返ってくる。  でも。勢い良く顔を向けると、満面の笑みを浮かべる柚子先輩と目が合った。その隣には柚子先輩のお皿にお肉を置いていたのだろう、トングを持つ蓮先輩。  ここには柚子先輩がいる。姫や康介、蓮先輩に雄貴先輩、上の先輩達もいる。  ーーそんな中で私達が証人になってもいいの?  不安が顔に出ていたのか、健司先輩の大きな手が頭に乗せられた。 「どこ見てるんだよ。俺達はお前達二人にお願いしたいんだって」 「でも」 「私達がこうして結婚できるのは二人のおかげだもの。咲希と慧がいなければ、ランク落ちしたまま寮から出なきゃいけなかったかもしれない。咲希がいなければ結ばれる事はなかったかもしれないし、慧が一人で悪者になってくれなければ証拠も掴めなかった。何より、二人がいなければきっと私はまだ脱落者のままで、ここにはいれなかった」  亜実先輩の声は優しいけれど、どこか弾んだもの。 「俺は誕生日が来たけど、咲希はまだ未成年ですよ?」 「わかってるって。ここで書いてもらって、お前達が卒業してくる日に提出しようと思ってるんだ」 「提出して、その足で四人のお出迎えに行くわ。お祝いしてね?」  ここまで言ってもらって、首を横に振る選択肢なんてない。見合わせた慧の顔もどこか緩んでいる。 「私達でよければ」 「俺達でよければ」  声が重なったかと思えば、今度は二人揃って髪を乱された。
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