四、

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   学園の高くどこまでも続く塀が視界に入ってきたのは午後三時を過ぎた辺りだ。 「見えた!」 「今日平日だよね? 授業終わった頃かな⁉︎」 「そうだな」 「皆寮に帰って来てるかな?」  身を乗り出したところで変わらないのはわかっているけど、はやる気持ちは抑えられない。数日ぶりだけど数ヶ月ぶり。ネデナ学園にようやく帰って来れた。  車は速度を変える事なく塀沿いを走り続けた。やがて入口に近づくと、大きな正門が自動で開く。でも康介はその目の前で車を止めた。 「ここで降りろ」 「え?」  正門は開いているし、誰かに止められたわけでもない。それでも車は動かない。 「行ってこい」  その言葉に全てが込められている。 「うん、わかった」  咲希が扉に手をかけると同時に前の扉も開いた。咲希と慧が出て、尚人が続き、心菜も降りる。 「行ってくるね」 「ああ」 「ありがとうございました」 「ああ」 「迎え、来てくれよな」 「ああ」 「ああしか言わないじゃん。……じゃあね」 「……ああ」  また暫く会えなくなるというのに素っ気ないのが康介らしい。 「行こうか」  誰からともなく車に背を向けた。  思えば、ここを歩いて通るのは初めてだ。左奥は木々が青々と茂る林で、更にその奥には校舎がある。右奥には普通科と体育科の寮が見てとれるけど、先端技術科は陰に隠れてしまっている。そして正面には因縁深い学園本部があって、その向こうに二本の木が鎮座する丘とショップ街。  慣れ親しんだ学園なのに違った景色にも見える。  一つ息を吐いて、大きく一歩踏み入れた。一歩、また一歩、誰もが喋る事も駆け出す事もなく、ネデナ学園の土地を踏みしめる。  背後で機械音がし、続いて車のエンジン音がしたけれど、四人共振り返らなかった。  その時だ。 「おい!」  慧が見つけるのとどちらが早かったかはわからない。多分同時。同時に同じ方向を見て、そして叫んだ。 「ジスランっ!」
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